万葉集 (Manyoshu) | ||
譬喩
2828
[題詞]譬喩
[原文]紅之 深染乃衣乎 下著者 人之見久尓 仁寳比将出鴨
[訓読]紅の深染めの衣を下に着ば人の見らくににほひ出でむかも
[仮名],くれなゐの,こそめのきぬを,したにきば,ひとのみらくに,にほひいでむかも
2829
[題詞](譬喩)
[原文]衣霜 多在南 取易而 著者也君之 面忘而有
[訓読]衣しも多くあらなむ取り替へて着ればや君が面忘れたる
[仮名],ころもしも,おほくあらなむ,とりかへて,きればやきみが,おもわすれたる
2830
[題詞](譬喩)
[原文]梓弓 弓束巻易 中見刺 更雖引 君之随意
[訓読]梓弓弓束巻き替へ中見さしさらに引くとも君がまにまに
[仮名],あづさゆみ,ゆづかまきかへ,なかみさし,さらにひくとも,きみがまにまに
2831
[題詞](譬喩)
[原文]水沙兒居 渚座船之 夕塩乎 将待従者 吾社益
[訓読]みさご居る洲に居る舟の夕潮を待つらむよりは我れこそまされ
[仮名],みさごゐる,すにゐるふねの,ゆふしほを,まつらむよりは,われこそまされ
2832
[題詞](譬喩)
[原文]山河尓 筌乎伏而 不肯盛 <年>之八歳乎 吾竊N師
[訓読]山川に筌を伏せて守りもあへず年の八年を我がぬすまひし
[仮名],やまがはに,うへをふせて,もりもあへず,としのやとせを,わがぬすまひし
2833
[題詞](譬喩)
[原文]葦鴨之 多集池水 雖溢 儲溝方尓 吾将越八方
[訓読]葦鴨のすだく池水溢るともまけ溝の辺に我れ越えめやも
[仮名],あしがもの,すだくいけみづ,はふるとも,まけみぞのへに,われこえめやも
2834
[題詞](譬喩)
[原文]日本之 室原乃毛桃 本繁 言大王物乎 不成不止
[訓読]大和の室生の毛桃本繁く言ひてしものをならずはやまじ
[仮名],やまとの,むろふのけもも,もとしげく,いひてしものを,ならずはやまじ
2835
[題詞](譬喩)
[原文]真葛延 小野之淺茅乎 自心毛 人引目八面 吾莫名國
[訓読]ま葛延ふ小野の浅茅を心ゆも人引かめやも我がなけなくに
[仮名],まくずはふ,をののあさぢを,こころゆも,ひとひかめやも,わがなけなくに
2836
[題詞](譬喩)
[原文]三嶋菅 未苗在 時待者 不著也将成 三嶋菅笠
[訓読]三島菅いまだ苗なり時待たば着ずやなりなむ三島菅笠
[仮名],みしますげ,いまだなへなり,ときまたば,きずやなりなむ,みしますがかさ
2837
[題詞](譬喩)
[原文]三吉野之 水具麻我菅乎 不編尓 苅耳苅而 将乱跡也
[訓読]み吉野の水隈が菅を編まなくに刈りのみ刈りて乱りてむとや
[仮名],みよしのの,みぐまがすげを,あまなくに,かりのみかりて,みだりてむとや
2838
[題詞](譬喩)
[原文]河上尓 洗若菜之 流来而 妹之當乃 瀬社因目
[訓読]川上に洗ふ若菜の流れ来て妹があたりの瀬にこそ寄らめ
[仮名],かはかみに,あらふわかなの,ながれきて,いもがあたりの,せにこそよらめ
2839
[題詞](譬喩)
[原文]如是為哉 猶八成牛鳴 大荒木之 浮田之<社>之 標尓不有尓
[訓読]かくしてやなほやまもらむ大荒木の浮田の社の標にあらなくに
[仮名],かくしてや,なほやまもらむ,おほあらきの,うきたのもりの,しめにあらなくに
2840
[題詞](譬喩)
[原文]幾多毛 不零雨故 吾背子之 三名乃幾許 瀧毛動響二
[訓読]いくばくも降らぬ雨ゆゑ我が背子が御名のここだく瀧もとどろに
[仮名],いくばくも,ふらぬあめゆゑ,わがせこが,みなのここだく,たきもとどろに
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