University of Virginia Library

【百十九】

おなし女にみちのくにのかみにてしにし藤原のさねきかよみてをこせたりけるやまひいとおもくしてをこたりける比なりいかてたいめん給はらんとて

からくしておしみとめたる命もて逢ことをさへやまんとやする

といへりけれはおほいきみかへし

諸共にいさとはいはてしての山なとかは独こえんとはせし

といひたりけりさてきたりける夜もえあふましき事やありけむえあはさりけれはかへりにけりさてあしたに男のもとよりいひをこせたりける

暁はゆふつけ鳥のわひ声にをとらぬ音をそなきてかへりし

おほい君かへし

暁のねさめのみゝに聞しかと鳥よりほかの声はせさりき