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【百三】

平中かいろこのみなりけるさかりに市にいきけりなかころはよき人々いちにいきてなん色このむわさはしけるそれに故きさいの宮のこたちいちに出たる日になん有ける平中いろこのみかゝりてになうけさうしけりのちにふみをなんをこせたりけるをんなともくるまなりし人はおほかりしをたれにあるふみにかとなんいひやりけるさりけれはおとこのもとより

百敷の袂の数はみしかともわきて思ひの色そ恋しき

といへりけるはむさしのかみのむすめになん有けるそれなんいとこきかいねりきたりけるそれをとおもふなりけりされはそのむさしなんのちは返事はしていひつきにけるかたちきよけにかみなかくなとしてよきわかうとになんありけるいといたう人ひとけさうしけれと思ひあかりておとこなともせてなん有けるされとせちによはひけれはあひにけりそのあしたにふみもをこせすよるまてをともせす心うしと思あかして又の日まてとふみもをこせすそのよしたまちけれとあしたにつかう人なといとあたにものし給ときゝし人をあり/\てかくあひ奉り給てみつからこそいとまもさはり給ことありとも御文をたに奉りたまはぬ心うきことなとこれかれいふ心ちにもおもひゐたることを人もいひけれは心うくくやしとおもひてなきけりその夜もしやと思ひてまてと又こす又のひも文もをこせすすへて音もせて五六日になりぬこの女ねをのみなきて物もくはすつかふ人なと大かたはなおほしそかくてのみやみ給へき御身にもあらす人にはしらせてやみ給てことわさをもしたまひてんといひけり物もいはてこもりゐてつかふ人にも見えていとなかゝりけるかみをかいきりて手つからあまになりにけりつかふ人あつまりてなきけれといふかひもなしいと心うき身なれはしなんとおもふにもしなれすかくたに成ておこなひをたにせんかしかましくかくな人ひといひさはきそとなんいひけるかゝりけるやうは平中そのあひけるつとめて人をこせんとおもひけるにつかさのかみにはかにものへいますとてよりいましてよりふしたりけるをおひおこしていまゝてねたりけるとてせうえうしにとをき所へゐていましてさけのみのゝしりてさらにかへし給はすからうしてかへるまゝに亭子のみかとの御ともに大井にいておはしましぬそこにまたふた夜さふらふにいみしうゑひにけり夜更てかへり給ふに此女のかりいかんとするにかたふたかりけれはおほかたみなたかふかたへゐんの人々るいしていにけり此女いかにおほつかなくあやしと思ふらんと恋しきにけふたに日もとく暮なんいきてありさまもみつからいはんかつふみをやらんとゑひさめて思ひけるに人なんきてうちたたくたそとゝへはなをそうのきみにものきこえんといふさしのそきてみれはこの家の女なりむねつふれてこちこといひてふみをとりて見れはいとかうはしきかみにきれたるかみをすこしかいわかねてつゝみたりいとあやしうおほえてかいたることをみれは

あまの川空なる物と聞しかとわかめの前の涙成けり

とかきたりあまになりたるなるへしとみるに目もくれぬ心きもをまとはしてこのつかひにとへははやう御くしおろし給てきかゝれはこたちも昨日けふいみしうなきまとひ給ふけすの心ちにもいとむねいたくなんさはかりに侍りし御くしをといひてなく時におとこのこゝちいといみしなてうかゝるすきありきをしてかくわひしきめを見るらんとおもへとかひなしなく/\返事かく

よをわふる涙なかれてはやくともあまの川にはさやはなるへき

いとあさましきにえものもきこえすみつからたゝいまゝいりてとなんいひたりけるかくてすなはちきにけりそのかみ女はぬりこめに入にけり事のありやうさはりをつかふ人々にいひてなくことかきりなし物をたにきこえん御声をたにしたまへといひけれとさらにいらへをたにせすかゝるさはりをはしらてなをたゝいとをしさにいふとや思ひけんとてなんおとこはよにいみしきことにしける