群書類従卷第三百八
検校保己一集
物語部二
大和物語 上
群書類従卷第三百八 (Yamato monogatari) | ||
【百一】
おなし少将やまひにいといたうわつらひてすこしをこたりて内にまいりたりけり近江守公忠のきみ掃部助にて蔵人なりけるころなりけりそのかもりのすけにあひていひけるやうみたり心ちはまたをこたりはてねといとむつかしう心もとなく侍れはなんまいりつるのちはしらねとかくまて侍ことまかりいてゝあさてはかりまいりこんよきにそうしたまへなといひをきてまかてぬ三日はかりありて少将のもとよりふみをなむをこせたりけるを見れは
悔しくそ後にあはんと契けるけふをかきりといはまし物を
とのみかきたりいとあさましくて涙をこほしてつかひにとふいかゝものし給とゝへはつかひもいとよはくなり給ひにたりといひてなくをきくにさらにもきこえすみつからたゝいままいりてといひてさとにくるまとりにやりてまつほといと心もとなしこのゑのみかとにいてたちてまちつけてのりてはせゆく五条にそ少将のいへあるにいきつきてみれはいといみしうさはきのゝしりてかとさしつしぬる成けりせうそこいひいるれとなにのかひなしいみしうかなしくてなく/\かへりにけりかくてありけることをかんのくたりそうしけれはみかともかきりなくなん哀かり給ひける
群書類従卷第三百八
検校保己一集
物語部二
大和物語 上
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