千載和歌集 (Senzai wakashu) | ||
19. 千載和歌集卷第十九
釋教歌
前大納言公任
維摩經十喩此身は水の泡のごとしといへる心をよみ侍りける
うかべる雲のごとしといへる心を
花山院御製
三身如來を觀ずる心をよませ給うける
僧都源信
法花經藥草喩品の心をよみ侍りける
清少納言
菩提といふ寺に結縁の講しける時聽聞にまうでたりけるに人のもとよりとく歸りねといひたりければ遣はしける
藤原國房
後冷泉院の御時皇后宮に一品經供養せられける時壽量品のこゝろをよめる
堀川入道右大臣
寄月念極樂といへる心をよみ侍りける
瞻西上人
天王寺にまゐりて舍利を拜みたてまつりてよみ侍りける
藤原敦家朝臣
御たけにまうで侍りける精進の程金泥の法華經書き奉りて後御山に納めたてまつらむとて參り侍りける時思ふ心や侍りけむ、物に書き付けおきて侍りける
かくてまうで侍りて後御山にてなむ身まかりにける。其の後故郷にて此の歌は見出て侍りけるとなむ。
前大僧正覺忠
三十三所の觀音をがみ奉らむとて所々まゐり侍りける時美濃の谷汲にて油の出づるを見てよみ侍りける
穴穗の觀音をみたてまつりて
僧都覺雅
提婆品の心をよめる
前大僧正快修
陀羅尼品の受持法花名者福不可量何况擁護具足受持といふわたりを誦して持經者の結縁たのもしくや侍りけむ、よみ侍りける
源俊頼朝臣
阿彌陀の十二光佛の御名をよみ侍りける中に智惠光佛の心をよめる
崇徳院御製
百首の歌めしける時、普門品、弘誓深如海の心をよませ給うける
前參議教長
おなじ百首のとき花嚴經の心をよめる
即身成佛の心を
前大僧正覺忠
法華經信解品の心をよみ侍りける
崇徳院御製
冬のころ後入道法親王高野にこもりて侍りけるに送り給うける
仁和寺後入道法親王覺性
御返事
式子内親王
百首の歌の中に法文の歌の中に普賢願の唯此願王不相捨離といへる心を
攝政前右大臣
百首の歌よませ侍りける時法文の歌に五智如來をよみ侍りけるに平等性智の心をよみ侍りける
宮内卿永範
維摩經十喩、此身如水中月といへるこゝろをよめる
法印慈圓
比叡の山に堂衆學徒不和の事出で來りて學徒皆散りける時千日の山ごもりみちなむ事もちかくひじりの跡をたえむ事を歎きてかすかに山洞にとゞまりて侍りける程に冬にもなりにければ雪ふりたる朝に尊圓法師のもとに遣しける
尊圓法師
かへし
左近中將良經
法花經弟子品、内秘菩薩行の心をよみ侍りける
藤原隆信朝臣
攝政前右大臣の家に百首の歌よませ侍りける時法文の歌の中に般若經の心をよめる
攝政家丹後
おなじ百首の時色即是空の心をよめる
前中納言師仲
法花經、我等長夜修習空法の心をよめる
圓位法師
壽量品の心をよめる
神祗伯顯仲
瞻西上人の雲居寺の極樂堂に堀河右大臣まゐりて歌よみ侍りけるによめる
寂超法師
大品經の
の心をよめる藤原資隆朝臣
維摩教十喩此身は夢の如しといへる心をよめる
登蓮法師
寂蓮法師
高野にまゐりてよみ侍りける
式子内親王家中將
煩惱即菩提の心をよめる
前大納言時忠
觀音の誓を思ひてよみ侍りける
藤原伊綱
法花經序品の心をよめる
右京大夫季能
授記品の心をよめる
皇太后宮大夫俊成
法師品、漸見濕土泥決定知近水の心をよみ侍りける
顯昭法師
提婆品をよめる
法橋泰覺
勸持品をよめる
藤原敦仲
蓮上法師
神力品、如日月光明能除諸幽冥のこゝろをよめる
皇太后宮大夫俊成
勸發品の心をよめる
中原有安
滿三七日巳乘六牙白象の心をよめる
中原清重
雪朝聞法といふ心を
惠章法師
山階寺の涅槃會の暮方に遮羅入滅の昔を思ひよみ侍りける
俊秀法師
涅槃經の如於鏡中見諸色像の心をよめる
寂然法師
火盛久不燃といへる心をよめる
平康頼
阿彌陀經の心をよめる
藤原定長朝臣
天王寺の御幸の時、古寺忍昔といへる心をよめる
天台座主明雲
天王寺にまゐりて遺身舍利を禮してよめる
律師永觀
往生講式かき侍りける時教化の歌よみ侍りける
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