後撰和歌集 (Gosen wakashu [Book 1]) | ||
17. 後撰和歌集卷第十七
雜歌三
小野小町
いそのかみといふ寺に詣でゝ日の暮れにければ夜あけてまかり歸らむとてとゞまりて此寺に遍昭侍ると人の告げ侍りければ物いひ心みむとていひ侍りける
遍昭
かへし
せが井の君
法皇かへりみ給ひけるを後々は時衰へありしやうにもあらずなりにければ里にのみ侍りて奉らせける
左大臣
女の許よりあだにきこゆることなどいひて侍りければ
讀人も
題志らず
大輔
かしこまる事侍りてさとに侍りけるを忍びてざうしにまゐれりけるをおほいまうち君のなどか音もせぬなどうらみ侍りければ
讀人志らず
人のむすめに名立ち侍りて
なき名たちける頃
大輔
前坊おはしまさずなりての頃五節の師のもとにつかはしける
讀人志らず
かへし
大輔
大輔がざうしに敦忠の朝臣の許へ遣はしける文をもてたがへたりければ遣はしける
敦忠朝臣
かへし
讀人志らず
いひちぎりて後こと人につきぬときゝて
伊勢
題志らず
かしら白かりける女を見て
讀人も
題志らず
いと忍びて語らひける女の許につかはしける文を心にもあらで落したりけるをみつけて遣はしける
伊勢
昔同じ所に宮づかへしける人年ごろいかにぞなどとひおこせて侍りければ遣しける
讀人志らず
はらからの中にいかなる事かありけむ常ならぬさまに見えければ
女のいとくらべ難く侍りけるを相はなれにけるがこと人に迎へられぬと聞きて男のつかはしける
梔子ある所に乞ひに遣はしたるに色のいと惡しかりければ
題しらず
人のもとに文遣はしける男人に見せけりときゝてつかはしける
檜垣の嫗
つくしの白川といふ所にすみ侍りけるに大貳藤原興範朝臣のまかり渡るついでに水たべむとて打ち寄りてこひ侍りければ水をもて出でゝ詠み侍りける
かしこに名高くことこのむ女になむ侍りける。
貫之
志ぞくに侍りける女の男に名立ちてかゝる事なむある。人にいひさわげといひ侍りければ
題志らず
讀人志らず
女の許に文遣はしけるを返事もせずして後々は文を見もせで取りなむ置くと人の告げゝれば
紀のすけに侍りける男のまかり通はずなりにければ彼男の姉のもとにうれへおこせて侍りければいと心うきことかなどいひ遣はしたりける返事に
貫之
すみ侍りける女宮づかへし侍りけるを友達なりける女同じ車にて貫之が家にまうできたりけり。貫之がめまらうどにあるじせむとてまかりおりて侍りける程にかの家を思ひかけて侍りければ忍びて車にいひいれ侍りける
讀人志らず
男の物にまかりて二年ばかりありてまうできたりけるを程へて後にことなしびにこと人に名たつときゝしは誠なりといへりければ
眞延法師
故女四のみこの後のわざせむとて菩提子のずゞをなむ右大臣もとめ侍るときゝてこのずゞを送るとて加へ侍りける
右大臣
かへし
讀人志らず
定めたるめも侍らずひとりぶしをのみすと女友だちの許よりたはぶれて侍りければ
眞延法師
前栽の中にすろの木おひて侍るときゝてゆきあきらのみこの許よりひと木こひに遣はしたれば加へてつかはしける
行明親王
かへし
業平朝臣
大井なる所にて人々酒たうべけるついでに
讀人志らず
題志らず
思ふ事侍りける頃志賀にまうでゝ
父母侍りける人のむすめに忍びて通ひ侍りけるを聞きつけてかう事せられ侍りけるを月日へて隱れ渡りけれど雨降りてえまかり出で侍らで籠りゐ侍りけるを父はゝ聞き付けていかゞはせむずるぞとてゆるす由いひて侍りければ
人の家にまかりたりけるにやり水に瀧いと面白かりければ歸りてつかはしける
源昇朝臣
法皇吉野の瀧御覽じける御供にて
法皇御製
僧正遍昭
山ぶみしはじめける時
讀人も
題志らず
遍昭
はじめて頭おろし侍りける時物にかきつけ侍りける
藤原元善朝臣
みちのくにの守にまかり下れりけるにたけくまの松の枯れて侍りけるを見て小松を植ゑつがせ侍りて任果てゝ後又同じ國にまかりなりて彼のさきの任に植ゑし松を見侍りて
讀人志らず
ふしみといふ所にて其心をこれかれよみけるに
題志らず
業平朝臣
身のうれへ侍りける時津の國にまかりてすみはじめ侍りけるに
文屋康秀
時にあはずして身を恨みてこもり侍りける時
土左
心にもあらぬ事をいふ頃男の扇にかきつけ侍りける
閑院大君宗于女
人の許より久しうこゝちわづらひてほと/\志くなむ有りつるといひてはべりければ
かんつけの峯雄
月夜にかれこれして
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