後撰和歌集 (Gosen wakashu [Book 1]) | ||
14. 後撰和歌集卷第十四
戀歌六
讀人志らず
人のもとにつかはしける
かへし
みづからまできて夜もすがら物いひ侍りけるに程なくあけ侍りにければまかりかへりて
女の許に遣はしける
かへし
いひわづらひてやみにける人に久しう有りて又遣はしける
かへし
男のまできてすき事をのみしければ人やいかゞ見るらむとて
かへし
男の久しう音づれざりければ
かへし
男のたゞなりける時は常にまうで來けるが物いひて後は門よりわたれどまでこざりければ
いひわびて二年ばかり音もせずなりにける男の五月ばかりにまうできて年頃久しう有りつるなど云ひてまかりにけるに
題志らず
物いひわびて女のもとにいひやりける
女のほかに侍りけるをそこにと教ふる人も侍らざりければ心づからとぶらひて侍りける返事に遣はしける
右大臣
忍びたる女の許よりなどか音もせぬと申したりければ
伊衡朝臣の女いまき
男のまでこであり/\て雨のふる夜おほがさをこひにつかはしたりければ
讀人志らず
はじめて人に遣はしける
いひわづらひてやみにけるを又思ひ出でゝとぶらひ侍りければいと定めなき心かなといひて飛鳥川の心をいひつかはして侍りければ
朝頼朝臣
思ひかけたる女の許に
讀人しらず
かへし
いひかはしける男の親いといたうせいすと聞きて女のいひつかはしける
同じ所に侍りける人の思ふ心侍りけれどいはで忍びけるをいかなる折にか有りけむあたりにかきておとしける
心ざしをばあはれと思へど人めになむつゝむといひて侍りければ
題志らず
源整
文などつかはしける女のことをとこにつき侍りけるに遣しける
讀人しらず
整、かれがたになり侍りにければとゞめ置きたる笛を遣はすとて
菅原のおほいまうち君の家に侍りける女に通ひ侍りける男中たえて又とひて侍りければ
女の男を厭ひてさすがにいかゞおぼえけむいへりける
かへし
敦慶親王
女三のみこに
藤原守文
又わかうちかひに人の物いふときゝて
讀人志らず
男の許に雨ふる夜かさをやりて呼びけれどこざりければ
かへし
女の許よりいといたくな思ひわびそと頼めおこせて侍りければ
兵衛
元慶親王のみそかにすみ侍りける頃今こむとたのめてこずなりにければ
元方
忍びてすみ侍りける人の許よりかゝるけしき人にみすなといへりければ
讀人志らず
宇多院に侍りける人にせをそこつかはしける返事も侍らざりければ
女五のみこ
かへし
忠岑
つれなく侍りける人に
讀人志らず
立ちよりけるに女にげて入りければつかはしける
逢ひにける女の又あはざりければ
藤原蔭基
女の許にまかりそめてあしたに
讀人志らず
男のとはずなりにければ
かへし
女に物いはむとてきたりけれどもこと人に物云ひければ歸りて
かへし
戒仙法師
人につかはしける
讀人志らず
きて物いひける人の大方はむつまじかりけれど近うはえあはずして
藤原さねたゞ
女の許につかはしける
讀人志らず
かへし
男のもとより花盛にこむといひてこざりければ
右近
をとこの久しうとはざりければ
讀人志らず
あひ志りて侍りける人の許に久しうまからざりければ忘草何をか種と思ひしはといふことをいひ遣はしたりければ
かへし
女ともろともに侍りて
かへし
南院式部郷のみこの女
元長親王に夏のさうぞくしておくるとてそへたりける
讀人志らず
久しうとはざりける人の思ひ出でゝ今宵までこむ門さゝであひまてと申してまでこざりければ
源庶明朝臣
人をいひわづらひてこと人にあひ侍りて後いかがありけむ、はじめの人に思ひかへりて程へにければ文はやらずして扇に高砂のかたかきたるにつけて遣はしける
讀人志らず
かへし
思ふ人にえあひ侍らで忘られにければ
題志らず
頼めたりける人に
源よしの朝臣
女につかはしける
讀人も
題志らず
贈太政大臣
さだまらぬ心ありと女のいひたりければつかはしける
右近
久しうまかり通はずなりければ十月計りに雪の少し降りたるあしたにいひ侍りける
讀人志らず
源正明朝臣十月ばかりに床夏を折りて送りて侍りければ
兼輔朝臣
女の恨むる事ありて親の許にまかり渡りて侍りけるに雪の深く降りて侍りければあしたに女の迎ひに車遣はしける消息にくはへて遣はしける
讀人志らず
かへし
心ざし侍る女、宮仕へし侍りければあふ事難くて侍りけるに雪のふるにつかはしける
かへし
藤原時雨
物いひ侍りける女に年のはての頃ほひ遣はしける
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