| 162 | Author: | Miyamoto, Yuriko | Add | | Title: | Kago | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | お幾の信仰は、何時頃から始まったものなのか、またその始まりにどんな動機を持っているのか、誰も知る者はなかった。ただそれと心附いた時には、もう十幾人という昔からの友達の中で、一人として彼女から、あらたかな
天理王命
(
てんりおうのみこと
)
の加護に就て説き聞かされない者はないほどになっていた。 | | Similar Items: | Find |
163 | Author: | Miyamoto, Yuriko | Add | | Title: | Kaihin ichijitsu | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 発動機の工合がわるくて、台所へ水が出なくなった。父が、寝室へ入って老人らしい鳥打帽をかぶり、外へ出て行った。暖炉に火が燃え、鳩時計は細長い松ぼっくりのような分銅をきしませつつ時を刻んでいる。露台の
硝子
(
ガラス
)
越しに見える松の並木、その梢の間に閃いている遠い海面の濃い狭い藍色。きのう雪が降ったのが今日は
燦
(
うら
)
らかに晴れているから、幅広い日光と一緒に、潮の香が炉辺まで来そうだ。光りを背に受けて、露台の籐椅子にくつろいだ
装
(
なり
)
で母がいる。彼女は不機嫌であった。いつも来る毎に水がうまく出ないから腹を立てるのであった。 | | Similar Items: | Find |
164 | Author: | Miyamoto, Yuriko | Add | | Title: | Kairyu | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | やっと客間のドアのあく音がして、瑛子がこっちの部屋へ出て来た。上気した頬の色で、テーブルのところへ突立ったままでいた順二郎と宏子のわきを無言で通り、黙ったまま上座のきまりの席に座った。 | | Similar Items: | Find |
167 | Author: | Miyamoto, Yuriko | Add | | Title: | Kao | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | ルイザは、天気にも、教父にも、または夫のハンスに対しても、ちっとも苦情を云うべきことのないのは知っていた。 | | Similar Items: | Find |
169 | Author: | Miyamoto, Yuriko | Add | | Title: | Kawakami shi ni kotaeru | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 河上氏の私に対する反ばくは一種独特な説諭調でなかなか高びしゃである、が、論点が混乱していて、多くの点が主観的すぎる。河上氏は私が「読者の声を拒絶し、封じ」「一切の批判をさしひかえ」させようとするかのように書いているが、全く事実に反する。この三年間、私は自分の仕事への数多くの批評に対して沈黙を守りすぎてきた。 | | Similar Items: | Find |
171 | Author: | Miyamoto, Yuriko | Add | | Title: | "Kekkon no seitai" | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 石川達三氏の「結婚の生態」という小説について、これまで文学作品として正面からとりあげた書評は見当らなかった。それにもかかわらず、この本は大変広汎に読まれている本の一つである。大変ひろく読まれながら、その読後の感想というものが読者の側からはっきりと反映して来ないまま、読者は作家と馴れあって一種の流行の空気を作者のためにかもし出す作用を行っている作品である。 | | Similar Items: | Find |
175 | Author: | Miyamoto, Yuriko | Add | | Title: | Akarui koba | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | ソヴェト同盟の南にロストフという都会がある。ドン川という大きい河に沿って、花の沢山咲いた綺麗な街が、新しい労働者住宅やクラブの間にとおっている。私は七月のある朝、ドイツからソヴェト同盟へやって来たドイツの労働者見学団といっしょにホテルを出て、ドン国営煙草工場見学に出かけた。ロストフはウクライナ共和国の主都で、附近にはソヴェト第一の大国営農場「ギガント」があった。丁度素晴らしい「トラクター」や「コンバイン」をつかって麦の収穫を終ったばかりのところである。ドイツからの労働者見学団の若い男女たちは、その収穫の壮大な仕事ぶりを見てきたばかりなので、片言のロシア語やあやしげな英語で(私にドイツ語がわからないから)さかんにその見事な様子について私に話してきかせる。私がロストフへきていたのもその「ギガント」を見るためなのである。 | | Similar Items: | Find |
177 | Author: | Miyamoto, Yuriko | Add | | Title: | Kodaiji | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 三等の切符を買って、平土間の最前列に座った。一番終りの日で、彼等の後は
棧敷
(
さじき
)
の隅までぎっしりの人であった。一間と離れぬところに、舞台が高く見えた。 | | Similar Items: | Find |
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