| 41 | Author: | Anonymous | Add | | Title: | Taketori monogatari | | | Published: | 2001 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて、竹を取りつゝ、萬づの事に使ひけり。名をば讃岐造麿となむいひける。その竹の中に、本光る竹一筋ありけり。怪しがりて寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人、いと美しうて居たり。翁いふやう、「われ朝夕毎に見る竹の中に、おはするにて知りぬ。子になり給ふべき人なめり」とて、手に打入れて家に持ちて來ぬ。妻の嫗に預けて養はす。美しきこと限りなし。いと幼ければ籠に入れて養ふ。 | | Similar Items: | Find |
42 | Author: | Anonymous | Add | | Title: | Taketori no okina monogatari | | | Published: | 2004 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 今はむかし竹とりの翁といふものありけり野山にましりて竹をとりつゝ万の事につかひけり名をはさぬきの宮つことなむいひける其竹の中に本光る竹なむ一すち有けりあやしかりて寄て見るにつゝの中ひかりたりそれを見れは三寸はかりなる人いとうつくしうてゐたり翁云やう我朝毎夕毎にみる竹の中におはするにてしりぬ子になりたまふへき人なめりとて手に打入て家にもちて来ぬめの女にあつけてやしなはすうつくしき事限なしいとおさなけれはこに入てやしなふ竹とりの竹をとるに此子を見つけて後に竹とるにふしを隔てよことにこかねある竹を見つくる事かさなりぬかくておきなやう/\ゆたかになり行この児やしなふほとにすく/\とおほきになり増る三月計の内によきほとなる人になりぬれはかみあけなとさうしてかみあけさせもきすちやうのうちよりもいたさすいつきかしつきやしなふ此児のかたちのけさうなる事よになく屋のうちは闇き所なく光満たり翁心あしく候へし時も此子をみれはくるしき事もやみぬ腹たゝしくあることもなくさみけり翁竹をとる事久敷成ぬいきほひまうの物に成にけり此子いと大きに成ぬれはなをみむろといむへのあきたを喚てつけさすあきたなよ竹のかくや姫とつけつれ此ほと三日打あけあそふ万のあそひをそしける男はうけきらはすよひつとへてかしこくあそふ世かいのをのこあてなるもいやしきもいかて此かくや姫をえてしかな見てしかなと音に聞愛てまとふ其あたりの垣にも家の戸にもをる人たにたはやすくみるましき物を夜はやすきいもねす闇の夜にもこゝかしこよりのそきかいまみまとひあへりさる時よりなん夜はひとは云ける人も物ともせぬ所にまとひありけとも何のしるしあるへくも見えす家の人ともに物をたにいはんとていひかくれともことゝもせすあたりをはなれぬきんたち夜をあかし日をくらす人おほかりをろかなる人はようなきありきはよしなかりけりとてこす成にけりその中になを云けるは色好みといはるゝ限五人思ひやむ時なく夜ひる来けり其名とも石作りの御子、くらもちの御子左大臣安倍のみむらし大納言大とものみゆき中納言いそのかみのもろたり此人々なりけり世中におほかる人をたにすこしも形ちよしと聞ては見まほしくする人とも也けれはかのかくや姫をみまほしくて物もくはす思ひつゝかの家に行てたゝすみありきけれともかひあるへくもあらす文を書てやれとも返事もせす侘歌なと書てをこすれともかひなしと思へと霜月しはすの降氷水無月のてりはたゝくにもさはらすきたり此人々ある時は竹とりを喚てむすめを我にたへとふし拝み手をすりのたまへとをのかなさぬ子なれは心にも随はすなむあると云て月日を過すかゝれは此人々家に帰りて物を思ひ祈りをし願をたつ思ひやむへくもあらすさりとも終に男あはせさらんやはとおもひて頼をかけたりあなかちに心さしをみえありく是を見つけて翁かくや姫に云給我子のほとけへんけの人と申なからこゝらおほきさまてやしなひたてまつる志をろかならす翁の申さん事を聞給ひてんやといへはかくや姫何事をかのたまはむ事を承はらさらむ変化の物にてはんへりけん身ともしらす親とこそおもひ奉れといへは翁うれしくもの給ふ物かなと云翁年七十にあまりぬ今日ともあすともしらす此世の人はおとこは女に逢女は男にあふ事をす其後なむ門もひろくもなり侍るいかてかさる事なくてはおはしまさむかくや姫のいはくなむてうさる事かし侍らんと云は変化の人といふとも女の身持給へり翁のあらんかきりはかうてもいますかりなんかし此人々の年月を経てかうのみいましつゝのたまふ事をおもひ定て独々にあひ奉り給ひねといへはかくや姫いはくよくもあらぬ形ちをふかき心もしらてあた心つきなは後くやしき事も有へきをと思ふはかり也世の賢き人成ともふかき志をしらてはあひかたしとなむ思ふと云翁いはく思ひのことくもの給ふかなそも/\いかやうなる志あらん人にはあはんとおほすかはかりの心さしをろかならぬ人々にこそあめれかくや姫のいはくなにはかりのふかきをかみんといはむいさゝかの事也人の心さしひとしかんなりいかてか中にをとりまさりはしらむ五人のひとの中にゆかしき物みせ給へらんに御志まさりたりとてつかふまつらんとそのおはすらん人々に申給へといふよき事なりとうけつ日くるゝ程に例のあつまりぬあるひは笛を吹或はうたをうたひ或は琵琶しやうかをしあるひはうそふきあふきをならしなとするに翁出ていはく忝もきたなけなる所に年月を経てものし給ふ事きはまりたるかしこまりと申す翁の命今日明日ともしらぬをかくの給ふ君達にもよく思ひ定てつかふまつれと申も理なりいつれもをとり増りおはしまさねは御志の程はみゆへしつかふまつらん事はそれになむ定むへきといへは是よき事なり人の御恨も有ましと云五人の人々もよき事也といへは翁入て云かくや姫石作の御子には・佛の御いしのはちと云物ありそれをとりて給へと云倉もちの御子には東の海に蓬莱と云山ありそれにしろかねを根として金をくきとし白き玉をみとしたてる木ありそれを一えたおりて給はらんと云今独にはもろこしにある火鼠の革きぬをたまへ大ともの大納言には龍のくひに五色に光る玉ありそれをとりて給へ磯の上の中納言にはつはくらめのもたるこやすのかひ一つとりてたまへといふ翁かたき事ともにこそあなれ此国に有物にはあらすかく難事をはいかに申さんといふかくや姫なにかかたからんといへは翁とまれかくまれ申さんとて出てかくなむきこゆるやうに見たまへといへは御子たち上たちめ聞ておいらかにあたりよりたになありきそとやはのたまはぬといひてうむしてみな帰ぬなを此女みては世にあるましき心ちしけれは天竺にある物ももてこぬものかはと思ひめくらしていしつくりの御子は心のしたくある人にて天竺に二つとなきはちを百千万里のほといきたりともいかてとるへきと思ひてかくや姫のもとには今日なん天竺へ石のはちとりにまかると聞せて三年計大和国とをちの郡に有山寺にひむつるの前なるはちのひたくろに墨付たるを取て錦の袋に入てつくり花の枝につけてかくや姫の家にもて来て見せけれはかくや姫あやしかりてみれははちの中にふみ有ひろけて見れは | | Similar Items: | Find |
43 | Author: | Anonymous | Add | | Title: | Tokan kiko | | | Published: | 2001 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 齡は百とせのなかばに近づきて、鬢の霜やうやく冷しといへども、なすことなくして、徒らに明かし暮らすのみにあらず、さしていづこに住みはつべしとも思ひ定めぬ有樣なれば、かの白樂天の、身は浮雲に似たり、首は霜に似たり、と書き給へる、あはれに思ひ合せらる。もとより金張七葉の榮えを好まず、ただ陶潜五柳の住みかを求む。しかはあれども、みやまの奧の柴の庵までも、しばらく思ひやすらふ程なれば、なまじひに都のほとりに住まひつつ、人なみに世にふる道になんつらなれり。これ即ち、身は朝市にありて心は隱遁にあるいはれなり。 | | Similar Items: | Find |
44 | Author: | Anonymous | Add | | Title: | Toribeyama monogatari | | | Published: | 2004 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | とにかくに常ならぬ物は此世なりけりこゝにさいつころ武蔵国のかたへに物まなふさうさなん有けるそのつかさ何かしの和尚とかや聞えし人の御弟子に民部卿といひしは容色いときよけに心のねさしふかく我家のことならぬ史記なとやうのかたき巻々ををたにかた/\にかよはしよみきこえ給ふれはこと人よりもすくよかにおほえ給ひかたはらちかくめされて年ころつかへたてまつりぬつねはたゝ松風にねふりをさまし谷水に心をやりてふかきのりの水上をたつね窓の蛍のむつひ枝の雪をならして法の燈をもかゝけつへきさきらあれはとてかたみの人もいともてなすなるへしされはそのころ九重に何のみしほとかありて国々よりたとき僧達のまいりつとふ事なん侍りける此和尚もその数にめされてのほり給ふへきさたまりけれはかみなかしも旅よそひとてのゝしりあへりころは夏たつはしめなれは木々の梢もしけりあひ庭の千くさも色そへていとすゝしけなる宵のまの月もやかて草葉にかくれ武蔵野の名残おほへてむらさきのゆかりあれはあとの事なとなにくれといひこしらへぬるうちに短き夜半のうき枕むすふともなきうたゝねのゆめを残して明はなれむとするころあつまの空をたちて日数十日あまりに都になむつきぬ何事もおとろへたる世といへと猶九重のかみさひたるさまこそこよなふめてたけれかくてほとへぬれは御祈の事ははてぬれと猶かへるへきほともゆるきなけれはその事となく月日をおくりけるほとに年もかへりぬ空のけしきなこりなくうらゝかに雪まの草もあをみいててをのつから人のこゝろものひらかにまいて玉をしける御かた/\は庭よりはしめ見所おほくみかきましぬるありさままねひたてむもことのはたるましくなむいつしか都ちかきよもの山の端霞のよそになり行ころはまたみぬ花も俤にたちておなし心の友とちとうちつれ北山のかたへとこゝろさしける道のほとに老たるわかきたかきあやしき行来る袖も色めきあへる中にさはやかなる車かたへの木蔭によせてつきしたかふをのこなとさしよりつゝいとおかしき花のけしき御らむせよすみれましりの草もなつかしくなときこえけれはおり給へるよそほひ年のほとまた二八にもたり給はぬほとなるか色々に染わけたる衣いとなよやかにきなしてなかめ給へる様体かしらつきうしろてなとこの世の人ともおもはれすあてやかなるさまはかりなし民部ほのかに見てしよりそゝろに心まとひてかへさのあともしたはしきまてなむみとれたるをともなふ人々もめとかむるほとなれはさすかに人のいひおもはむもあさはかなれはと心にこめて立かへりしより俤にのみおほえて昼はひめもす夜はすからになけき明し今は心もみたれ髪のいふにもあまる恋草はつむともつきぬ七車の又めくりあふ事もやといたらぬくまもなくまとひありきてもとむれとひとりこかるゝすて舟のさほさしていつことをしゆるよすかもなけれはむなしく立かへりけるか四条の坊門とかや打過るに公卿のすむ家と見えておくふかく木立ものふりなにとなくなつかしくおほえけれは門のかたはらにさし入たるにかたちいとたくひなき児の梅の枝に蝶鳥とひちかひからめきたるをうちきて散すきたる花の梢をつく/\となかめて | | Similar Items: | Find |
47 | Author: | Arishima, Takeo | Add | | Title: | Boku no boshi no ohanashi | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 「僕の帽子はおとうさんが東京から買って来て下さったのです。ねだんは二円八十
銭
(
せん
)
で、かっこうもいいし、らしゃも上等です。おとうさんが大切にしなければいけないと
仰有
(
おっしゃ
)
いました。僕もその帽子が好きだから大切にしています。夜は寝る時にも手に持って寝ます」 | | Similar Items: | Find |
49 | Author: | Arishima, Takeo | Add | | Title: | Kain no matsuei | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 長い影を地にひいて、
痩馬
(
やせうま
)
の
手綱
(
たづな
)
を取りながら、
彼
(
か
)
れは黙りこくって歩いた。大きな汚い風呂敷包と一緒に、
章魚
(
たこ
)
のように頭ばかり大きい
赤坊
(
あかんぼう
)
をおぶった彼れの妻は、少し
跛脚
(
ちんば
)
をひきながら三、四間も離れてその跡からとぼとぼとついて行った。 | | Similar Items: | Find |
52 | Author: | Arishima, Takeo | Add | | Title: | Mizuno Senko shi no sakuhin ni tsuite | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 仙子氏とはとう/\相見る機會が來ない中に永い別れとなつた。手紙のやりとりが始つたのも、さう久しい前からのことではない。またその作品にも――創作を始めて以來、殊に讀書に
懶
(
ものう
)
くなつた私は――殆んど接したことがないといつていゝ位で過して來た。そのうちに仙子氏は死んでしまつた。その死後私は遺作の數々を讀まして貰つて、生前會つておくべき人に會はずにしまつたといふ
憾
(
うら
)
みを覺えることが深い。 | | Similar Items: | Find |
53 | Author: | Arishima, Takeo | Add | | Title: | Oborekaketa kyodai | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: |
土用波
(
どようなみ
)
という高い波が風もないのに海岸に
打寄
(
うちよ
)
せる
頃
(
ころ
)
になると、海水浴に
来
(
き
)
ている
都
(
みやこ
)
の人たちも段々別荘をしめて帰ってゆくようになります。今までは海岸の砂の上にも水の中にも、朝から晩まで、沢山の人が集って来て、砂山からでも見ていると、あんなに大勢な人間が一たい
何所
(
どこ
)
から出て来たのだろうと不思議に思えるほどですが、九月にはいってから三日目になるその日には、見わたすかぎり砂浜の何所にも人っ子一人いませんでした。 | | Similar Items: | Find |
54 | Author: | Arishima, Takeo | Add | | Title: | Tsubame to oji | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: |
燕
(
つばめ
)
という鳥は所をさだめず飛びまわる鳥で、暖かい所を見つけておひっこしをいたします。今は日本が暖かいからおもてに出てごらんなさい。羽根がむらさきのような黒でお
腹
(
なか
)
が白で、のどの所に赤い
首巻
(
くびま
)
きをしておとう様のおめしになる
燕尾服
(
えんびふく
)
の
後部
(
うしろ
)
みたような、尾のある
雀
(
すずめ
)
よりよほど大きな鳥が目まぐるしいほど活発に飛び回っています。このお話はその燕のお話です。 | | Similar Items: | Find |
55 | Author: | Arishima, Takeo | Add | | Title: | Umareizuru nayami | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 私は自分の仕事を神聖なものにしようとしていた。ねじ曲がろうとする自分の心をひっぱたいて、できるだけ伸び伸びしたまっすぐな明るい世界に出て、そこに自分の芸術の宮殿を築き上げようともがいていた。それは私にとってどれほど喜ばしい事だったろう。と同時にどれほど苦しい事だったろう。私の心の奥底には確かに――すべての人の心の奥底にあるのと同様な――火が燃えてはいたけれども、その火を
燻
(
いぶ
)
らそうとする
塵芥
(
ちりあくた
)
の
堆積
(
たいせき
)
はまたひどいものだった。かきのけてもかきのけても容易に火の燃え立って来ないような瞬間には私はみじめだった。私は、机の向こうに開かれた窓から、冬が来て雪にうずもれて行く一面の畑を見渡しながら、滞りがちな筆をしかりつけしかりつけ運ばそうとしていた。 | | Similar Items: | Find |
56 | Author: | Matsuo, Basho | Add | | Title: | Kashima mode | | | Published: | 2006 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 洛の貞室、須磨の浦の月見に行きて、「松陰や月は三五夜中納言」と言ひけむ狂夫の昔もなつかしきままに、この秋、鹿島の山の月見んと思ひたつことあり。ともなふ人ふたり、浪客の士ひとり、一人は水雲の僧。僧は烏のごとくなる墨のころもに、三衣の袋を襟にうちかけ、出山の尊像を厨子に崇め入れてうしろに背負ひ、しゅ杖ひき鳴らして、無門の関も障るものなく、天地に独歩して出でぬ。いまひとりは、僧にもあらず俗にもあらず、鳥鼠の間に名をかうぶりの、鳥なき島にも渡りぬべく、門より舟に乗りて、行徳といふところに至る。舟をあがれば、馬にも乗らず、細脛の力をためさんと、徒歩よりぞ行く。 | | Similar Items: | Find |
58 | Author: | Matsuo, Basho | Add | | Title: | Sarashina nikki | | | Published: | 2006 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 更科の里、姥捨山の月見んこと、しきりにすすむる秋風の心に吹きさわぎて、ともに風雲の情をくるはすもの、またひとり、越人といふ。木曽路は山深く道さがしく、旅寝の力も心もとなしと、荷兮子が奴僕をして送らす。おのおのこころざし尽すといへども、駅旅のこと心得ぬさまにて、共におぼつかなく、ものごとのしどろにあとさきなるも、なかなかにをかしきことのみ多し。 | | Similar Items: | Find |
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