| 41 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Yosoki | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 加賀の国
黒壁
(
くろかべ
)
は、金沢市の郊外一
里程
(
りてい
)
の処にあり、魔境を
以
(
もっ
)
て
国中
(
こくちゅう
)
に鳴る。
蓋
(
けだ
)
し
野田山
(
のだやま
)
の奥、深林幽暗の地たるに因れり。 | | Similar Items: | Find |
42 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Zushi dayori | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: |
夜
(
よる
)
は、はや
秋
(
あき
)
の
螢
(
ほたる
)
なるべし、
風
(
かぜ
)
に
稻葉
(
いなば
)
のそよぐ
中
(
なか
)
を、
影
(
かげ
)
淡
(
あは
)
くはら/\とこぼるゝ
状
(
さま
)
あはれなり。 | | Similar Items: | Find |
51 | Author: | Kobayashi, Issa | Add | | Title: | Ora ga Haru | | | Published: | 1998 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 昔たんごの國普甲寺といふ所に、深く淨土を願ふ上人ありけり。としの始は世間祝ひ
事してざゞめけば、我もせん迚、大卅日の夜、ひとりつかふ小法師に手紙したゝめ渡
して、翌の曉にしか%\せよと、きといひをしへて、本堂へとまりにやりぬ。小法師
は元日の旦、いまだ隅々は小闇きに、初鳥の聲とおなじくがばと起て、教へのごとく
表門を丁々と敲けば、内よりいづこよりと問ふ時、西方彌陀佛より年始の使僧に候と
答ふるよりはやく、上人裸足にておどり出て、門の扉を左右へさつと開て、小法師を
上坐に稱して、きのふの手紙をとりて、うや/\しくいたゞきて讀でいはく、其世界
は衆苦充滿に候間はやく吾國に來たるべし、聖衆出むかひしてまち入候とよみ終りて、
おゝ/\と泣れけるとかや。此上人みづから工み拵へたる悲しみに、みづからなげき
つゝ、初春の淨衣を絞りて、したゝる泪を見て祝ふとは、物に狂ふさまながら、俗人
に對して無情を演るを禮とすると聞からに、佛門においては、いはひの骨張なるべけ
れ。それとはいさゝか替りて、おのれらは俗塵に埋れて世渡る境界ながら、鶴龜にた
ぐへての祝盡しも、厄拂ひの口上めきてそら%\しく思ふからに、から風の吹けばと
ぶ屑家は、くづ屋のあるべきやうに、門松立てず、煤はかず、雪の山路の曲り形りに、
ことしの春もあなた任せになんむかへける | | Similar Items: | Find |
52 | Author: | Koda, Rohan | Add | | Title: | Goju no to | | | Published: | 2000 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 木理美しき槻胴、縁にはわざと赤樫を用ひたる岩疊作りの長火鉢に對ひて話し
敵もなく唯一人、少しは淋しさうに坐り居る三十前後の女、男のやうに立派な眉を何
日掃ひしか剃つたる痕の青々と、見る眼も覺むべき雨後の山の色を留めて翠の匂ひ一
トしほ床しく、鼻筋つんと通り目尻キリヽと上り、洗ひ髮をぐる/\と酷く丸めて引
裂紙をあしらひに一本簪でぐいと留めを刺した色氣無の樣はつくれど、憎いほど烏黒
にて艷ある髮の毛の一ト綜二綜後れ亂れて、淺黒いながら澁氣の拔けたる顏にかゝれ
る趣きは、年増嫌ひでも褒めずには置かれまじき風體、我がものならば着せてやりた
い好みのあるにと好色漢が隨分頼まれもせぬ詮議を蔭では爲べきに、さりとは外見を
捨てて堅義を自慢にした身の裝り方、柄の選擇こそ野暮ならね、高が二子の綿入れに
繻子襟かけたを着て、何處に紅くさいところもなく、引つ掛けたねんねこばか
りは往時何なりしやら疎い縞の絲織なれど、此とて幾度か水
を潛つて來た奴なるべし。今しも臺所にては下婢が器物洗ふ音ばかりして家内靜かに、
他には人ある樣子もなく、何心なくいたづらに黒文字を舌端で嬲り躍らせなどして居
し女、ぷつりと其を囓み切つてぷいと吹き飛ばし、火鉢の灰かきならし炭火體よく埋
け、芋籠より小巾とり出し、銀ほど光れる長五徳を磨き、おとしを拭き、銅壺の蓋ま
で綺麗にして、さて南部霰地の大鐵瓶を正然かけし後、石尊樣詣りのついでに箱根へ
寄つて來しものが姉御へ御土産と呉れたらしき寄木細工の小纖麗なる煙草箱を右の手
に持た鼈甲管の煙管で引き寄せ、長閑に一服吹うて線香の烟るやうに緩々と烟りを噴
き出し、思はず知らず太息吐いて。多分は良人の手に入るであらうが、憎いのつそり
めが對うへ廻り、去年使うてやつた恩も忘れ、上人樣に胡麻摺り込んで、強て此度の
仕事を爲うと身の分も知らずに願ひを上げたとやら、清吉の話しでは、上人樣に依怙
贔屓の御情はあつても名さへ響かぬのつそりに大切の仕事を
任せらるゝ事は、檀家方の手前寄進者方の手前も難しからうなれば大丈夫此方に命け
らるゝに極つたこと、よしまたのつそりに命けらるればとて彼奴に出來る仕事でもな
く、彼奴の下に立つて働く者もあるまいなれば見事出來し損ずるは眼に見えたことと
のよしなれど、早く良人が愈々御用命かつたと笑ひ顏して歸つて來られゝばよい、
類
の少い仕事だけに、是非爲て見たい受け合つて見たい、慾徳は何でも關はぬ、谷中感
應寺の五重塔は川越の源太が作り居つた、嗚呼よく出來した感心なと云はれて見たい
と面白がつて、何日になく職業に氣のはずみを打つて居らるゝに、若し此仕事を他に
奪られたら何のやうに腹を立てらるるか癇癪を起さるゝか知れず、それも道理であつ
て見れば傍から妾の慰めやうも無い譯、嗚呼何にせよ目出度う早く歸つて來られゝば
よいと、口には出さねど女房氣質、今朝背面から我が縫ひし羽織打ち掛け着せて出し
たる男の上を氣遣ふところへ表の骨太格子手あらく開けて。姉御、兄貴は、なに感應
寺へ、仕方が無い、それでは姉御に、濟みませんが御頼み申します、つい昨晩醉まし
てし後は云はず異な手つきをして話せば、眉頭に皺をよせて笑ひながら。仕方
のないも無いもの、少し締まるがよいと、云ひ云ひ立つて幾
干かの金を渡せば其をもつて門口に出で、何やら諄々押問答せし末此方に來りて、拳
骨で額を抑へ。何も濟みませんでした、ありがたうござりますと無骨な禮を爲たるも
可笑。 | | Similar Items: | Find |
54 | Author: | Kuki, Shuzo | Add | | Title: | Iki no kozo | | | Published: | 2005 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 「いき」といふ現象は如何なる構造をもつてゐるか。先づ我々は如何なる方法によつて「いき」の構造を闡明し、「いき」の存在を把握することが出來るであらうか。「いき」が一の意味を構成してゐることは云ふまでもない。また「いき」が言語として成立してゐることも事實である。しからば「いき」といふ語は各國語のうちに見出されるといふ普遍性を備へたものであらうか。我我は先づそれを調べて見なければならない。さうして、もし「いき」といふ語がわが國語にのみ存するものであるとしたならば、「いき」は特殊の民族性を持つた意味であることになる。然らば特殊な民族性をもつた意味、即ち特殊の文化存在は如何なる方法論的態度をもつて取扱はるべきものであらうか。「いき」の構造を明かにする前に我々はこれらの先決問題に答へなければならぬ。 | | Similar Items: | Find |
56 | Author: | Kunikida, Doppo | Add | | Title: | E no kanashimi | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: |
畫
(
ゑ
)
を
好
(
す
)
かぬ
小供
(
こども
)
は
先
(
ま
)
づ
少
(
すく
)
ないとして
其中
(
そのうち
)
にも
自分
(
じぶん
)
は
小供
(
こども
)
の
時
(
とき
)
、
何
(
なに
)
よりも
畫
(
ゑ
)
が
好
(
す
)
きであつた。(と
岡本某
(
をかもとぼう
)
が
語
(
かた
)
りだした)。 | | Similar Items: | Find |
57 | Author: | Kunikida, Doppo | Add | | Title: | Gogai | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | ぼろ洋服を着た男爵
加藤
(
かとう
)
が、今夜もホールに現われている。彼は多少キじるし[1]だとの評がホールの仲間にあるけれども、おそらくホールの御連中にキ[2]的傾向を持っていないかたはあるまいと思われる。かく言う自分もさよう、同類と信じているのである。 | | Similar Items: | Find |
58 | Author: | Kunikida, Doppo | Add | | Title: | Kyushi | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 九段坂の
最寄
(
もより
)
にけち
なめし屋がある。春の末の夕暮れに
一人
(
ひとり
)
の男が大儀そうに敷居をまたげた。すでに三人の客がある。まだランプをつけないので薄暗い土間に居並ぶ人影もおぼろである。 | | Similar Items: | Find |
60 | Author: | Masaoka, Shiki | Add | | Title: | Byosho saji | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 我ながらなが/\しき病に飽きはてゝ、つれ/″\のやるかたなさに書読み物書くを人は我を善く勉めたりといふ。日頃書などすさめぬ人も長き病の牀には好みて小説伝記を読み、あるはてにはの合はぬ歌発句をひねくりなどするものなり。況して一たび行きかゝりし斯道、これに離れよといはんは死ねといはんの直接なるに如かず。 | | Similar Items: | Find |
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