Subject • | Japanese Text Initiative | [X] | | Path |
(196)
|
| 22 | Author: | Futabatei, Shimei | Requires cookie* | | Title: | Yo ga genbun itchi no yurai | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 言文一致に就いての意見、と、そんな大した研究はまだしてないから、寧ろ一つ懺悔話をしよう。それは、自分が初めて言文一致を書いた由來――もすさまじいが、つまり、文章が書けないから始まったといふ一伍一什の顛末さ。 もう何年ばかりになるか知らん、余程前のことだ。何か一つ書いて見たいとは思ったが、元來の文章下手で皆目方角が分らぬ。そこで、坪内先生の許へ行って、何うしたらよからうかと話して見ると、君は圓朝の落語を知ってゐよう、あの圓朝の落語通りに書いて見たら何うかといふ。 | | Similar Items: | Find |
24 | Author: | Izumi, Kyoka | Requires cookie* | | Title: | Baishoku kamonanban | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | はじめ、目に着いたのは――ちと申兼ねるが、――とにかく、
緋縮緬
(
ひぢりめん
)
であった。その燃立つようなのに、朱で
処々
(
ところどころ
)
ぼかしの入った
長襦袢
(
ながじゅばん
)
で。女は
裙
(
すそ
)
を
端折
(
はしょ
)
っていたのではない。
褄
(
つま
)
を高々と掲げて、膝で挟んだあたりから、
紅
(
くれない
)
がしっとり垂れて、白い足くびを
絡
(
まと
)
ったが、どうやら濡しょびれた不気味さに、そうして引上げたものらしい。素足に染まって、その
紅
(
あか
)
いのが映りそうなのに、藤色の緒の重い厚ぼったい
駒下駄
(
こまげた
)
、泥まみれなのを、弱々と内輪に揃えて、
股
(
また
)
を一つ
捩
(
よじ
)
った姿で、
降
(
ふり
)
しきる雨の待合所の片隅に、腰を掛けていたのである。 | | Similar Items: | Find |
26 | Author: | Izumi, Kyoka | Requires cookie* | | Title: | Gaisenmatsuri | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 紫の幕、
紅
(
くれない
)
の旗、空の色の青く晴れたる、草木の色の緑なる、
唯
(
ただ
)
うつくしきものの
弥
(
いや
)
が上に重なり合ひ、
打混
(
うちこん
)
じて、
譬
(
たと
)
へば
大
(
おおい
)
なる
幻燈
(
うつしえ
)
の
花輪車
(
かりんしゃ
)
の輪を造りて、
烈
(
はげ
)
しく舞出で、舞込むが見え候のみ。何をか
緒
(
いとぐち
)
として順序よく申上げ候べき。全市街はその日朝まだきより、七色を以て彩られ候と申すより他はこれなく候。 | | Similar Items: | Find |
27 | Author: | Izumi, Kyoka | Requires cookie* | | Title: | Getsurei junitai | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: |
山嶺
(
さんれい
)
の
雪
(
ゆき
)
なほ
深
(
ふか
)
けれども、
其
(
そ
)
の
白妙
(
しろたへ
)
に
紅
(
くれなゐ
)
の
日
(
ひ
)
や、
美
(
うつく
)
しきかな
玉
(
たま
)
の
春
(
はる
)
。
松籟
(
しようらい
)
時
(
とき
)
として
波
(
なみ
)
に
吟
(
ぎん
)
ずるのみ、
撞
(
つ
)
いて
驚
(
おどろ
)
かす
鐘
(
かね
)
もなし。
萬歳
(
まんざい
)
の
鼓
(
つゞみ
)
遙
(
はる
)
かに、
鞠唄
(
まりうた
)
は
近
(
ちか
)
く
梅
(
うめ
)
ヶ
香
(
か
)
と
相
(
あひ
)
聞
(
き
)
こえ、
突羽根
(
つくばね
)
の
袂
(
たもと
)
は
松
(
まつ
)
に
友染
(
いうぜん
)
を
飜
(
ひるがへ
)
す。をかし、
此
(
こ
)
のあたりに
住
(
すま
)
ふなる
橙
(
だい/\
)
の
長者
(
ちやうじや
)
、
吉例
(
きちれい
)
よろ
昆布
(
こんぶ
)
の
狩衣
(
かりぎぬ
)
に、
小殿原
(
ことのばら
)
の
太刀
(
たち
)
を
佩反
(
はきそ
)
らし、
七草
(
なゝくさ
)
の
里
(
さと
)
に
若菜
(
わかな
)
摘
(
つ
)
むとて、
讓葉
(
ゆづりは
)
に
乘
(
の
)
つたるが、
郎等
(
らうどう
)
勝栗
(
かちぐり
)
を
呼
(
よ
)
んで
曰
(
いは
)
く、あれに
袖形
(
そでかた
)
の
浦
(
うら
)
の
渚
(
なぎさ
)
に、
紫
(
むらさき
)
の
女性
(
によしやう
)
は
誰
(
た
)
そ。……
蜆
(
しゞみ
)
御前
(
ごぜん
)
にて
候
(
さふらふ
)
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28 | Author: | Izumi, Kyoka | Requires cookie* | | Title: | Hakushaku no kanzashi | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | このもの
語
(
がたり
)
の起った土地は、清きと、美しきと、二筋の大川、市の両端を流れ、
真中央
(
まんなか
)
に城の天守なお高く
聳
(
そび
)
え、森黒く、
濠
(
ほり
)
蒼
(
あお
)
く、国境の山岳は
重畳
(
ちょうじょう
)
として、湖を包み、海に沿い、橋と、坂と、辻の柳、
甍
(
いらか
)
の浪の町を
抱
(
いだ
)
いた、北陸の都である。 | | Similar Items: | Find |
29 | Author: | Izumi, Kyoka | Requires cookie* | | Title: | Hebikui | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: |
西
(
にし
)
は
神通川
(
じんつうがは
)
の
堤防
(
ていばう
)
を
以
(
もつ
)
て
劃
(
かぎり
)
とし、
東
(
ひがし
)
は
町盡
(
まちはづれ
)
の
樹林
(
じゆりん
)
境
(
さかひ
)
を
爲
(
な
)
し、
南
(
みなみ
)
は
海
(
うみ
)
に
到
(
いた
)
りて
盡
(
つ
)
き、
北
(
きた
)
は
立山
(
りふざん
)
の
麓
(
ふもと
)
に
終
(
をは
)
る。
此間
(
このあひだ
)
十
里
(
り
)
見通
(
みとほ
)
しの
原野
(
げんや
)
にして、
山水
(
さんすゐ
)
の
佳景
(
かけい
)
いふべからず。
其
(
その
)
川
(
かは
)
幅
(
はゞ
)
最
(
もつと
)
も
廣
(
ひろ
)
く、
町
(
まち
)
に
最
(
もつと
)
も
近
(
ちか
)
く、
野
(
の
)
の
稍
(
やゝ
)
狹
(
せま
)
き
處
(
ところ
)
を
郷
(
がう
)
屋敷田畝
(
やしきたんぼ
)
と
稱
(
とな
)
へて、
雲雀
(
ひばり
)
の
巣獵
(
すあさり
)
、
野草
(
のぐさ
)
摘
(
つみ
)
に
妙
(
めう
)
なり。 | | Similar Items: | Find |
30 | Author: | Izumi, Kyoka | Requires cookie* | | Title: | Ki no saki o omou | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: |
雨
(
あめ
)
が、さつと
降出
(
ふりだ
)
した、
停車場
(
ていしやば
)
へ
着
(
つ
)
いた
時
(
とき
)
で――
天象
(
せつ
)
は
卯
(
う
)
の
花
(
はな
)
くだしである。
敢
(
あへ
)
て
字義
(
じぎ
)
に
拘泥
(
こうでい
)
する
次第
(
しだい
)
ではないが、
雨
(
あめ
)
は
其
(
そ
)
の
花
(
はな
)
を
亂
(
みだ
)
したやうに、
夕暮
(
ゆふぐれ
)
に
白
(
しろ
)
かつた。やゝ
大粒
(
おほつぶ
)
に
見
(
み
)
えるのを、もし
掌
(
たなごころ
)
にうけたら、
冷
(
つめた
)
く、そして、ぼつと
暖
(
あたゝか
)
に
消
(
き
)
えたであらう。
空
(
そら
)
は
暗
(
くら
)
く、
風
(
かぜ
)
も
冷
(
つめ
)
たかつたが、
温泉
(
ゆ
)
の
町
(
まち
)
の
但馬
(
たじま
)
の
五月
(
ごぐわつ
)
は、
爽
(
さわやか
)
であつた。 | | Similar Items: | Find |
33 | Author: | Izumi, Kyoka | Requires cookie* | | Title: | Maigo | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | お
孝
(
かう
)
が
買物
(
かひもの
)
に
出掛
(
でか
)
ける
道
(
みち
)
だ。
中里町
(
なかざとまち
)
から
寺町
(
てらまち
)
へ
行
(
ゆ
)
かうとする
突當
(
つきあたり
)
の
交番
(
かうばん
)
に
人
(
ひと
)
だかりがして
居
(
ゐ
)
るので
通過
(
とほりす
)
ぎてから
小戻
(
こもどり
)
をして、
立停
(
たちどま
)
つて、
少
(
すこ
)
し
離
(
はな
)
れた
處
(
ところ
)
で
振返
(
ふりかへ
)
つて
見
(
み
)
た。 | | Similar Items: | Find |
38 | Author: | Izumi, Kyoka | Requires cookie* | | Title: | Onryo shakuyo | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 婦人は、座の
傍
(
かたわら
)
に人気のまるでない時、ひとりでは
按摩
(
あんま
)
を取らないが
可
(
い
)
いと、
昔気質
(
むかしかたぎ
)
の誰でもそう云う。
上
(
かみ
)
はそうまでもない。あの
下
(
しも
)
の事を言うのである。
閨
(
ねや
)
では別段に注意を要するだろう。以前は影絵、うつし絵などでは、
巫山戯
(
ふざけ
)
たその光景を見せたそうで。――
御新姐
(
ごしんぞ
)
さん、……奥さま。……さ、お横に、とこれから腰を
揉
(
も
)
むのだが、横にもすれば、
俯向
(
うつむけ
)
にもする、一つくるりと返して、ふわりと柔くまた横にもしよう。水々しい
魚
(
うお
)
は、真綿、羽二重の
俎
(
まないた
)
に寝て、術者はまな
箸
(
ばし
)
を持たない料理人である。
衣
(
きぬ
)
を
透
(
とお
)
して、肉を揉み、筋を
萎
(
なや
)
すのであるから
恍惚
(
うっとり
)
と身うちが溶ける。ついたしなみも粗末になって、下じめも解けかかれば、帯も緩くなる。きちんとしていてさえざっとこの趣。……
遊山
(
ゆさん
)
旅籠
(
はたご
)
、温泉宿などで
寝衣
(
ねまき
)
、浴衣に、
扱帯
(
しごき
)
、
伊達巻
(
だてまき
)
一つの時の様子は、ほぼ……お互に、しなくっても
可
(
よ
)
いが想像が出来る。
膚
(
はだ
)
を左右に揉む拍子に、いわゆる
青練
(
あおねり
)
も
溢
(
こぼ
)
れようし、
緋縮緬
(
ひぢりめん
)
も
友染
(
ゆうぜん
)
も敷いて落ちよう。按摩をされる
方
(
かた
)
は、
対手
(
あいて
)
を
盲
(
めくら
)
にしている。そこに姿の油断がある。足くびの時なぞは、一応は職業行儀に心得て、
太脛
(
ふくらはぎ
)
から曲げて引上げるのに、すんなりと
衣服
(
きもの
)
の
褄
(
つま
)
を巻いて包むが、療治をするうちには双方の気のたるみから、
踵
(
かかと
)
を
摺下
(
ずりさが
)
って褄が波のようにはらりと落ちると、包ましい膝のあたりから、白い踵が、空にふらふらとなり、しなしなとして、按摩の手の
裡
(
うち
)
に糸の乱るるがごとく
縺
(
もつ
)
れて、
艶
(
えん
)
に
媚
(
なまめ
)
かしい
上掻
(
うわがい
)
、
下掻
(
したがい
)
、ただ
卍巴
(
まんじともえ
)
に降る雪の中を
倒
(
さかし
)
に
歩行
(
ある
)
く風情になる。バッタリ
真暗
(
まっくら
)
になって、……影絵は消えたものだそうである。 | | Similar Items: | Find |
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