1 | Author: | Anonymous | Add |
Title: | Tokan kiko | ||
Published: | 2001 | ||
Subjects: | Japanese Text Initiative | ||
Description: | 齡は百とせのなかばに近づきて、鬢の霜やうやく冷しといへども、なすことなくして、徒らに明かし暮らすのみにあらず、さしていづこに住みはつべしとも思ひ定めぬ有樣なれば、かの白樂天の、身は浮雲に似たり、首は霜に似たり、と書き給へる、あはれに思ひ合せらる。もとより金張七葉の榮えを好まず、ただ陶潜五柳の住みかを求む。しかはあれども、みやまの奧の柴の庵までも、しばらく思ひやすらふ程なれば、なまじひに都のほとりに住まひつつ、人なみに世にふる道になんつらなれり。これ即ち、身は朝市にありて心は隱遁にあるいはれなり。 | ||
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