| 1 | Author: | Yosano, Akiko | Add | | Title: | Kaette kara | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 浜松とか静岡とか、
此方
(
こちら
)
へ来ては山北とか、国府津とか、停車する度に呼ばれるのを聞いても、疲労し切つた
身体
(
からだ
)
を持つた
鏡子
(
かねこ
)
の鈍い神経には格別の感じも与へなかつたのであつたが、
平沼
(
ひらぬま
)
と聞いた時にはほのかに心のときめくのを覚えた。それは丁度ポウトサイド、コロンボと過ぎて
新嘉坡
(
しんがぽうる
)
に船の着く前に、恋しい子供達の
音信
(
たより
)
が来て居るかも知れぬと云ふ
望
(
のぞみ
)
に心を引かれたのと一緒で自身のために
此処
(
こゝ
)
迄来て居る身内のあるのを予期して居たからである。
鏡子
(
かねこ
)
の
伴
(
つれ
)
は文榮堂書肆の主人の
畑尾
(
はたを
)
と、鏡子の
良人
(
をつと
)
の
靜
(
しづか
)
の甥で、鏡子よりは五つ六つ年下の荒木
英也
(
ひでや
)
と云ふ文学士とである。畑尾は何かを聞いた英也に、 | | Similar Items: | Find |
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