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Japanese Text Initiative (196)
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21Author:  Dazai, OsamuAdd
 Title:  Viyon no tsuma  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:  あわただしく、玄関をあける音が聞えて、私はその音で、眼をさましましたが、それは泥酔の夫の、深夜の帰宅にきまっているのでございますから、そのまま黙って寝ていました。
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22Author:  Futabatei, ShimeiAdd
 Title:  Yo ga genbun itchi no yurai  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:  言文一致に就いての意見、と、そんな大した研究はまだしてないから、寧ろ一つ懺悔話をしよう。それは、自分が初めて言文一致を書いた由來――もすさまじいが、つまり、文章が書けないから始まったといふ一伍一什の顛末さ。 もう何年ばかりになるか知らん、余程前のことだ。何か一つ書いて見たいとは思ったが、元來の文章下手で皆目方角が分らぬ。そこで、坪内先生の許へ行って、何うしたらよからうかと話して見ると、君は圓朝の落語を知ってゐよう、あの圓朝の落語通りに書いて見たら何うかといふ。
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23Author:  Hayama, YoshikiAdd
 Title:  Umi ni ikuru hitobito  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:   室蘭港 ( むろらんこう ) が奥深く[1]入り込んだ、その太平洋への 湾口 ( わんこう ) に、 大黒島 ( だいこくとう ) が 栓 ( せん ) をしている。雪は、北海道の全土をおおうて地面から、雲までの厚さで横に降りまくった。
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24Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Baishoku kamonanban  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:  はじめ、目に着いたのは――ちと申兼ねるが、――とにかく、 緋縮緬 ( ひぢりめん ) であった。その燃立つようなのに、朱で 処々 ( ところどころ ) ぼかしの入った 長襦袢 ( ながじゅばん ) で。女は 裙 ( すそ ) を 端折 ( はしょ ) っていたのではない。 褄 ( つま ) を高々と掲げて、膝で挟んだあたりから、 紅 ( くれない ) がしっとり垂れて、白い足くびを 絡 ( まと ) ったが、どうやら濡しょびれた不気味さに、そうして引上げたものらしい。素足に染まって、その 紅 ( あか ) いのが映りそうなのに、藤色の緒の重い厚ぼったい 駒下駄 ( こまげた ) 、泥まみれなのを、弱々と内輪に揃えて、 股 ( また ) を一つ 捩 ( よじ ) った姿で、 降 ( ふり ) しきる雨の待合所の片隅に、腰を掛けていたのである。
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25Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Bangari  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:   初冬 ( はつふゆ ) の 夜更 ( よふけ ) である。
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26Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Gaisenmatsuri  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:  紫の幕、 紅 ( くれない ) の旗、空の色の青く晴れたる、草木の色の緑なる、 唯 ( ただ ) うつくしきものの 弥 ( いや ) が上に重なり合ひ、 打混 ( うちこん ) じて、 譬 ( たと ) へば 大 ( おおい ) なる 幻燈 ( うつしえ ) の 花輪車 ( かりんしゃ ) の輪を造りて、 烈 ( はげ ) しく舞出で、舞込むが見え候のみ。何をか 緒 ( いとぐち ) として順序よく申上げ候べき。全市街はその日朝まだきより、七色を以て彩られ候と申すより他はこれなく候。
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27Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Getsurei junitai  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:   山嶺 ( さんれい ) の 雪 ( ゆき ) なほ 深 ( ふか ) けれども、 其 ( そ ) の 白妙 ( しろたへ ) に 紅 ( くれなゐ ) の 日 ( ひ ) や、 美 ( うつく ) しきかな 玉 ( たま ) の 春 ( はる ) 。 松籟 ( しようらい ) 時 ( とき ) として 波 ( なみ ) に 吟 ( ぎん ) ずるのみ、 撞 ( つ ) いて 驚 ( おどろ ) かす 鐘 ( かね ) もなし。 萬歳 ( まんざい ) の 鼓 ( つゞみ ) 遙 ( はる ) かに、 鞠唄 ( まりうた ) は 近 ( ちか ) く 梅 ( うめ ) ヶ 香 ( か ) と 相 ( あひ ) 聞 ( き ) こえ、 突羽根 ( つくばね ) の 袂 ( たもと ) は 松 ( まつ ) に 友染 ( いうぜん ) を 飜 ( ひるがへ ) す。をかし、 此 ( こ ) のあたりに 住 ( すま ) ふなる 橙 ( だい/\ ) の 長者 ( ちやうじや ) 、 吉例 ( きちれい ) よろ 昆布 ( こんぶ ) の 狩衣 ( かりぎぬ ) に、 小殿原 ( ことのばら ) の 太刀 ( たち ) を 佩反 ( はきそ ) らし、 七草 ( なゝくさ ) の 里 ( さと ) に 若菜 ( わかな ) 摘 ( つ ) むとて、 讓葉 ( ゆづりは ) に 乘 ( の ) つたるが、 郎等 ( らうどう ) 勝栗 ( かちぐり ) を 呼 ( よ ) んで 曰 ( いは ) く、あれに 袖形 ( そでかた ) の 浦 ( うら ) の 渚 ( なぎさ ) に、 紫 ( むらさき ) の 女性 ( によしやう ) は 誰 ( た ) そ。…… 蜆 ( しゞみ ) 御前 ( ごぜん ) にて 候 ( さふらふ ) 。
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28Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Hakushaku no kanzashi  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:  このもの 語 ( がたり ) の起った土地は、清きと、美しきと、二筋の大川、市の両端を流れ、 真中央 ( まんなか ) に城の天守なお高く 聳 ( そび ) え、森黒く、 濠 ( ほり ) 蒼 ( あお ) く、国境の山岳は 重畳 ( ちょうじょう ) として、湖を包み、海に沿い、橋と、坂と、辻の柳、 甍 ( いらか ) の浪の町を 抱 ( いだ ) いた、北陸の都である。
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29Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Hebikui  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:   西 ( にし ) は 神通川 ( じんつうがは ) の 堤防 ( ていばう ) を 以 ( もつ ) て 劃 ( かぎり ) とし、 東 ( ひがし ) は 町盡 ( まちはづれ ) の 樹林 ( じゆりん ) 境 ( さかひ ) を 爲 ( な ) し、 南 ( みなみ ) は 海 ( うみ ) に 到 ( いた ) りて 盡 ( つ ) き、 北 ( きた ) は 立山 ( りふざん ) の 麓 ( ふもと ) に 終 ( をは ) る。 此間 ( このあひだ ) 十 里 ( り ) 見通 ( みとほ ) しの 原野 ( げんや ) にして、 山水 ( さんすゐ ) の 佳景 ( かけい ) いふべからず。 其 ( その ) 川 ( かは ) 幅 ( はゞ ) 最 ( もつと ) も 廣 ( ひろ ) く、 町 ( まち ) に 最 ( もつと ) も 近 ( ちか ) く、 野 ( の ) の 稍 ( やゝ ) 狹 ( せま ) き 處 ( ところ ) を 郷 ( がう ) 屋敷田畝 ( やしきたんぼ ) と 稱 ( とな ) へて、 雲雀 ( ひばり ) の 巣獵 ( すあさり ) 、 野草 ( のぐさ ) 摘 ( つみ ) に 妙 ( めう ) なり。
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30Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Ki no saki o omou  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:   雨 ( あめ ) が、さつと 降出 ( ふりだ ) した、 停車場 ( ていしやば ) へ 着 ( つ ) いた 時 ( とき ) で―― 天象 ( せつ ) は 卯 ( う ) の 花 ( はな ) くだしである。 敢 ( あへ ) て 字義 ( じぎ ) に 拘泥 ( こうでい ) する 次第 ( しだい ) ではないが、 雨 ( あめ ) は 其 ( そ ) の 花 ( はな ) を 亂 ( みだ ) したやうに、 夕暮 ( ゆふぐれ ) に 白 ( しろ ) かつた。やゝ 大粒 ( おほつぶ ) に 見 ( み ) えるのを、もし 掌 ( たなごころ ) にうけたら、 冷 ( つめた ) く、そして、ぼつと 暖 ( あたゝか ) に 消 ( き ) えたであらう。 空 ( そら ) は 暗 ( くら ) く、 風 ( かぜ ) も 冷 ( つめ ) たかつたが、 温泉 ( ゆ ) の 町 ( まち ) の 但馬 ( たじま ) の 五月 ( ごぐわつ ) は、 爽 ( さわやか ) であつた。
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31Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Kogyoku  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
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32Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Koharu no kitsune  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:  朝――この湖の名ぶつと聞く、 蜆 ( しじみ ) の汁で。…… 燗 ( かん ) をさせるのも面倒だから、バスケットの中へ持参のウイスキイを一口。蜆汁にウイスキイでは、ちと取合せが妙だが、それも旅らしい。……
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33Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Maigo  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:  お 孝 ( かう ) が 買物 ( かひもの ) に 出掛 ( でか ) ける 道 ( みち ) だ。 中里町 ( なかざとまち ) から 寺町 ( てらまち ) へ 行 ( ゆ ) かうとする 突當 ( つきあたり ) の 交番 ( かうばん ) に 人 ( ひと ) だかりがして 居 ( ゐ ) るので 通過 ( とほりす ) ぎてから 小戻 ( こもどり ) をして、 立停 ( たちどま ) つて、 少 ( すこ ) し 離 ( はな ) れた 處 ( ところ ) で 振返 ( ふりかへ ) つて 見 ( み ) た。
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34Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Misago no sushi  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description: 「 旦那 ( だんな ) さん、旦那さん。」
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35Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Momijizome taki no shiraito  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
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36Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Ningyo no hokora  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description: 「いまの、あの 婦人 ( ふじん ) が 抱 ( だ ) いて 居 ( ゐ ) た 嬰兒 ( あかんぼ ) ですが、 鯉 ( こひ ) か、 鼈 ( すつぽん ) ででも 有 ( あ ) りさうでならないんですがね。」
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37Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Onna kyaku  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description: 「謹さん、お手紙、」
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38Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Onryo shakuyo  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:  婦人は、座の 傍 ( かたわら ) に人気のまるでない時、ひとりでは 按摩 ( あんま ) を取らないが 可 ( い ) いと、 昔気質 ( むかしかたぎ ) の誰でもそう云う。 上 ( かみ ) はそうまでもない。あの 下 ( しも ) の事を言うのである。 閨 ( ねや ) では別段に注意を要するだろう。以前は影絵、うつし絵などでは、 巫山戯 ( ふざけ ) たその光景を見せたそうで。―― 御新姐 ( ごしんぞ ) さん、……奥さま。……さ、お横に、とこれから腰を 揉 ( も ) むのだが、横にもすれば、 俯向 ( うつむけ ) にもする、一つくるりと返して、ふわりと柔くまた横にもしよう。水々しい 魚 ( うお ) は、真綿、羽二重の 俎 ( まないた ) に寝て、術者はまな 箸 ( ばし ) を持たない料理人である。 衣 ( きぬ ) を 透 ( とお ) して、肉を揉み、筋を 萎 ( なや ) すのであるから 恍惚 ( うっとり ) と身うちが溶ける。ついたしなみも粗末になって、下じめも解けかかれば、帯も緩くなる。きちんとしていてさえざっとこの趣。…… 遊山 ( ゆさん ) 旅籠 ( はたご ) 、温泉宿などで 寝衣 ( ねまき ) 、浴衣に、 扱帯 ( しごき ) 、 伊達巻 ( だてまき ) 一つの時の様子は、ほぼ……お互に、しなくっても 可 ( よ ) いが想像が出来る。 膚 ( はだ ) を左右に揉む拍子に、いわゆる 青練 ( あおねり ) も 溢 ( こぼ ) れようし、 緋縮緬 ( ひぢりめん ) も 友染 ( ゆうぜん ) も敷いて落ちよう。按摩をされる 方 ( かた ) は、 対手 ( あいて ) を 盲 ( めくら ) にしている。そこに姿の油断がある。足くびの時なぞは、一応は職業行儀に心得て、 太脛 ( ふくらはぎ ) から曲げて引上げるのに、すんなりと 衣服 ( きもの ) の 褄 ( つま ) を巻いて包むが、療治をするうちには双方の気のたるみから、 踵 ( かかと ) を 摺下 ( ずりさが ) って褄が波のようにはらりと落ちると、包ましい膝のあたりから、白い踵が、空にふらふらとなり、しなしなとして、按摩の手の 裡 ( うち ) に糸の乱るるがごとく 縺 ( もつ ) れて、 艶 ( えん ) に 媚 ( なまめ ) かしい 上掻 ( うわがい ) 、 下掻 ( したがい ) 、ただ 卍巴 ( まんじともえ ) に降る雪の中を 倒 ( さかし ) に 歩行 ( ある ) く風情になる。バッタリ 真暗 ( まっくら ) になって、……影絵は消えたものだそうである。
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39Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Ruko shinso  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description: 「おじさん――その 提灯 ( ちょうちん ) ……」
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40Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Shippo no hashira  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:   山吹 ( やまぶき ) つつじが 盛 ( さかり ) だのに、その日の寒さは、 俥 ( くるま ) の上で幾度も外套の 袖 ( そで ) をひしひしと 引合 ( ひきあわ ) せた。
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