| 1 | Author: | Anonymous | Add | | Title: | Toribeyama monogatari | | | Published: | 2004 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | とにかくに常ならぬ物は此世なりけりこゝにさいつころ武蔵国のかたへに物まなふさうさなん有けるそのつかさ何かしの和尚とかや聞えし人の御弟子に民部卿といひしは容色いときよけに心のねさしふかく我家のことならぬ史記なとやうのかたき巻々ををたにかた/\にかよはしよみきこえ給ふれはこと人よりもすくよかにおほえ給ひかたはらちかくめされて年ころつかへたてまつりぬつねはたゝ松風にねふりをさまし谷水に心をやりてふかきのりの水上をたつね窓の蛍のむつひ枝の雪をならして法の燈をもかゝけつへきさきらあれはとてかたみの人もいともてなすなるへしされはそのころ九重に何のみしほとかありて国々よりたとき僧達のまいりつとふ事なん侍りける此和尚もその数にめされてのほり給ふへきさたまりけれはかみなかしも旅よそひとてのゝしりあへりころは夏たつはしめなれは木々の梢もしけりあひ庭の千くさも色そへていとすゝしけなる宵のまの月もやかて草葉にかくれ武蔵野の名残おほへてむらさきのゆかりあれはあとの事なとなにくれといひこしらへぬるうちに短き夜半のうき枕むすふともなきうたゝねのゆめを残して明はなれむとするころあつまの空をたちて日数十日あまりに都になむつきぬ何事もおとろへたる世といへと猶九重のかみさひたるさまこそこよなふめてたけれかくてほとへぬれは御祈の事ははてぬれと猶かへるへきほともゆるきなけれはその事となく月日をおくりけるほとに年もかへりぬ空のけしきなこりなくうらゝかに雪まの草もあをみいててをのつから人のこゝろものひらかにまいて玉をしける御かた/\は庭よりはしめ見所おほくみかきましぬるありさままねひたてむもことのはたるましくなむいつしか都ちかきよもの山の端霞のよそになり行ころはまたみぬ花も俤にたちておなし心の友とちとうちつれ北山のかたへとこゝろさしける道のほとに老たるわかきたかきあやしき行来る袖も色めきあへる中にさはやかなる車かたへの木蔭によせてつきしたかふをのこなとさしよりつゝいとおかしき花のけしき御らむせよすみれましりの草もなつかしくなときこえけれはおり給へるよそほひ年のほとまた二八にもたり給はぬほとなるか色々に染わけたる衣いとなよやかにきなしてなかめ給へる様体かしらつきうしろてなとこの世の人ともおもはれすあてやかなるさまはかりなし民部ほのかに見てしよりそゝろに心まとひてかへさのあともしたはしきまてなむみとれたるをともなふ人々もめとかむるほとなれはさすかに人のいひおもはむもあさはかなれはと心にこめて立かへりしより俤にのみおほえて昼はひめもす夜はすからになけき明し今は心もみたれ髪のいふにもあまる恋草はつむともつきぬ七車の又めくりあふ事もやといたらぬくまもなくまとひありきてもとむれとひとりこかるゝすて舟のさほさしていつことをしゆるよすかもなけれはむなしく立かへりけるか四条の坊門とかや打過るに公卿のすむ家と見えておくふかく木立ものふりなにとなくなつかしくおほえけれは門のかたはらにさし入たるにかたちいとたくひなき児の梅の枝に蝶鳥とひちかひからめきたるをうちきて散すきたる花の梢をつく/\となかめて | | Similar Items: | Find |
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