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81Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Bangari  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:   初冬 ( はつふゆ ) の 夜更 ( よふけ ) である。
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82Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Gaisenmatsuri  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:  紫の幕、 紅 ( くれない ) の旗、空の色の青く晴れたる、草木の色の緑なる、 唯 ( ただ ) うつくしきものの 弥 ( いや ) が上に重なり合ひ、 打混 ( うちこん ) じて、 譬 ( たと ) へば 大 ( おおい ) なる 幻燈 ( うつしえ ) の 花輪車 ( かりんしゃ ) の輪を造りて、 烈 ( はげ ) しく舞出で、舞込むが見え候のみ。何をか 緒 ( いとぐち ) として順序よく申上げ候べき。全市街はその日朝まだきより、七色を以て彩られ候と申すより他はこれなく候。
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83Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Getsurei junitai  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:   山嶺 ( さんれい ) の 雪 ( ゆき ) なほ 深 ( ふか ) けれども、 其 ( そ ) の 白妙 ( しろたへ ) に 紅 ( くれなゐ ) の 日 ( ひ ) や、 美 ( うつく ) しきかな 玉 ( たま ) の 春 ( はる ) 。 松籟 ( しようらい ) 時 ( とき ) として 波 ( なみ ) に 吟 ( ぎん ) ずるのみ、 撞 ( つ ) いて 驚 ( おどろ ) かす 鐘 ( かね ) もなし。 萬歳 ( まんざい ) の 鼓 ( つゞみ ) 遙 ( はる ) かに、 鞠唄 ( まりうた ) は 近 ( ちか ) く 梅 ( うめ ) ヶ 香 ( か ) と 相 ( あひ ) 聞 ( き ) こえ、 突羽根 ( つくばね ) の 袂 ( たもと ) は 松 ( まつ ) に 友染 ( いうぜん ) を 飜 ( ひるがへ ) す。をかし、 此 ( こ ) のあたりに 住 ( すま ) ふなる 橙 ( だい/\ ) の 長者 ( ちやうじや ) 、 吉例 ( きちれい ) よろ 昆布 ( こんぶ ) の 狩衣 ( かりぎぬ ) に、 小殿原 ( ことのばら ) の 太刀 ( たち ) を 佩反 ( はきそ ) らし、 七草 ( なゝくさ ) の 里 ( さと ) に 若菜 ( わかな ) 摘 ( つ ) むとて、 讓葉 ( ゆづりは ) に 乘 ( の ) つたるが、 郎等 ( らうどう ) 勝栗 ( かちぐり ) を 呼 ( よ ) んで 曰 ( いは ) く、あれに 袖形 ( そでかた ) の 浦 ( うら ) の 渚 ( なぎさ ) に、 紫 ( むらさき ) の 女性 ( によしやう ) は 誰 ( た ) そ。…… 蜆 ( しゞみ ) 御前 ( ごぜん ) にて 候 ( さふらふ ) 。
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84Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Hakushaku no kanzashi  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:  このもの 語 ( がたり ) の起った土地は、清きと、美しきと、二筋の大川、市の両端を流れ、 真中央 ( まんなか ) に城の天守なお高く 聳 ( そび ) え、森黒く、 濠 ( ほり ) 蒼 ( あお ) く、国境の山岳は 重畳 ( ちょうじょう ) として、湖を包み、海に沿い、橋と、坂と、辻の柳、 甍 ( いらか ) の浪の町を 抱 ( いだ ) いた、北陸の都である。
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85Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Hebikui  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:   西 ( にし ) は 神通川 ( じんつうがは ) の 堤防 ( ていばう ) を 以 ( もつ ) て 劃 ( かぎり ) とし、 東 ( ひがし ) は 町盡 ( まちはづれ ) の 樹林 ( じゆりん ) 境 ( さかひ ) を 爲 ( な ) し、 南 ( みなみ ) は 海 ( うみ ) に 到 ( いた ) りて 盡 ( つ ) き、 北 ( きた ) は 立山 ( りふざん ) の 麓 ( ふもと ) に 終 ( をは ) る。 此間 ( このあひだ ) 十 里 ( り ) 見通 ( みとほ ) しの 原野 ( げんや ) にして、 山水 ( さんすゐ ) の 佳景 ( かけい ) いふべからず。 其 ( その ) 川 ( かは ) 幅 ( はゞ ) 最 ( もつと ) も 廣 ( ひろ ) く、 町 ( まち ) に 最 ( もつと ) も 近 ( ちか ) く、 野 ( の ) の 稍 ( やゝ ) 狹 ( せま ) き 處 ( ところ ) を 郷 ( がう ) 屋敷田畝 ( やしきたんぼ ) と 稱 ( とな ) へて、 雲雀 ( ひばり ) の 巣獵 ( すあさり ) 、 野草 ( のぐさ ) 摘 ( つみ ) に 妙 ( めう ) なり。
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86Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Ki no saki o omou  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:   雨 ( あめ ) が、さつと 降出 ( ふりだ ) した、 停車場 ( ていしやば ) へ 着 ( つ ) いた 時 ( とき ) で―― 天象 ( せつ ) は 卯 ( う ) の 花 ( はな ) くだしである。 敢 ( あへ ) て 字義 ( じぎ ) に 拘泥 ( こうでい ) する 次第 ( しだい ) ではないが、 雨 ( あめ ) は 其 ( そ ) の 花 ( はな ) を 亂 ( みだ ) したやうに、 夕暮 ( ゆふぐれ ) に 白 ( しろ ) かつた。やゝ 大粒 ( おほつぶ ) に 見 ( み ) えるのを、もし 掌 ( たなごころ ) にうけたら、 冷 ( つめた ) く、そして、ぼつと 暖 ( あたゝか ) に 消 ( き ) えたであらう。 空 ( そら ) は 暗 ( くら ) く、 風 ( かぜ ) も 冷 ( つめ ) たかつたが、 温泉 ( ゆ ) の 町 ( まち ) の 但馬 ( たじま ) の 五月 ( ごぐわつ ) は、 爽 ( さわやか ) であつた。
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87Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Kogyoku  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
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88Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Koharu no kitsune  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:  朝――この湖の名ぶつと聞く、 蜆 ( しじみ ) の汁で。…… 燗 ( かん ) をさせるのも面倒だから、バスケットの中へ持参のウイスキイを一口。蜆汁にウイスキイでは、ちと取合せが妙だが、それも旅らしい。……
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89Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Koyahijiri  
 Published:  2000 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:  「參謀本部編纂の地圖を又繰開いて見るでもなからう、と思つたけれども、餘りの道ぢやから、手を觸るさへ暑くるしい、旅の法衣の袖をかゝげて、表紙を附けた折本になつてるのを引張り出した。
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90Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Kusameikyu  
 Published:  2001 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:  三浦の 大崩壊 ( おおくずれ ) を、魔所だと云う。
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91Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Maigo  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:  お 孝 ( かう ) が 買物 ( かひもの ) に 出掛 ( でか ) ける 道 ( みち ) だ。 中里町 ( なかざとまち ) から 寺町 ( てらまち ) へ 行 ( ゆ ) かうとする 突當 ( つきあたり ) の 交番 ( かうばん ) に 人 ( ひと ) だかりがして 居 ( ゐ ) るので 通過 ( とほりす ) ぎてから 小戻 ( こもどり ) をして、 立停 ( たちどま ) つて、 少 ( すこ ) し 離 ( はな ) れた 處 ( ところ ) で 振返 ( ふりかへ ) つて 見 ( み ) た。
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92Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Misago no sushi  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description: 「 旦那 ( だんな ) さん、旦那さん。」
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93Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Momijizome taki no shiraito  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
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94Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Ningyo no hokora  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description: 「いまの、あの 婦人 ( ふじん ) が 抱 ( だ ) いて 居 ( ゐ ) た 嬰兒 ( あかんぼ ) ですが、 鯉 ( こひ ) か、 鼈 ( すつぽん ) ででも 有 ( あ ) りさうでならないんですがね。」
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95Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Onna kyaku  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description: 「謹さん、お手紙、」
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96Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Onryo shakuyo  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:  婦人は、座の 傍 ( かたわら ) に人気のまるでない時、ひとりでは 按摩 ( あんま ) を取らないが 可 ( い ) いと、 昔気質 ( むかしかたぎ ) の誰でもそう云う。 上 ( かみ ) はそうまでもない。あの 下 ( しも ) の事を言うのである。 閨 ( ねや ) では別段に注意を要するだろう。以前は影絵、うつし絵などでは、 巫山戯 ( ふざけ ) たその光景を見せたそうで。―― 御新姐 ( ごしんぞ ) さん、……奥さま。……さ、お横に、とこれから腰を 揉 ( も ) むのだが、横にもすれば、 俯向 ( うつむけ ) にもする、一つくるりと返して、ふわりと柔くまた横にもしよう。水々しい 魚 ( うお ) は、真綿、羽二重の 俎 ( まないた ) に寝て、術者はまな 箸 ( ばし ) を持たない料理人である。 衣 ( きぬ ) を 透 ( とお ) して、肉を揉み、筋を 萎 ( なや ) すのであるから 恍惚 ( うっとり ) と身うちが溶ける。ついたしなみも粗末になって、下じめも解けかかれば、帯も緩くなる。きちんとしていてさえざっとこの趣。…… 遊山 ( ゆさん ) 旅籠 ( はたご ) 、温泉宿などで 寝衣 ( ねまき ) 、浴衣に、 扱帯 ( しごき ) 、 伊達巻 ( だてまき ) 一つの時の様子は、ほぼ……お互に、しなくっても 可 ( よ ) いが想像が出来る。 膚 ( はだ ) を左右に揉む拍子に、いわゆる 青練 ( あおねり ) も 溢 ( こぼ ) れようし、 緋縮緬 ( ひぢりめん ) も 友染 ( ゆうぜん ) も敷いて落ちよう。按摩をされる 方 ( かた ) は、 対手 ( あいて ) を 盲 ( めくら ) にしている。そこに姿の油断がある。足くびの時なぞは、一応は職業行儀に心得て、 太脛 ( ふくらはぎ ) から曲げて引上げるのに、すんなりと 衣服 ( きもの ) の 褄 ( つま ) を巻いて包むが、療治をするうちには双方の気のたるみから、 踵 ( かかと ) を 摺下 ( ずりさが ) って褄が波のようにはらりと落ちると、包ましい膝のあたりから、白い踵が、空にふらふらとなり、しなしなとして、按摩の手の 裡 ( うち ) に糸の乱るるがごとく 縺 ( もつ ) れて、 艶 ( えん ) に 媚 ( なまめ ) かしい 上掻 ( うわがい ) 、 下掻 ( したがい ) 、ただ 卍巴 ( まんじともえ ) に降る雪の中を 倒 ( さかし ) に 歩行 ( ある ) く風情になる。バッタリ 真暗 ( まっくら ) になって、……影絵は消えたものだそうである。
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97Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Ruko shinso  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description: 「おじさん――その 提灯 ( ちょうちん ) ……」
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98Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Ryutandan  
 Published:  2001 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:  日は 午 ( ご ) なり。あらら 木 ( ぎ ) のたらたら坂に 樹 ( き ) の蔭もなし。寺の 門 ( もん ) 、植木屋の庭、花屋の店など、坂下を 挟 ( さしはさ ) みて町の入口にはあたれど、のぼるに従ひて、ただ 畑 ( はた ) ばかりとなれり。番小屋めきたるもの小だかき 処 ( ところ ) に見ゆ。谷には 菜 ( な ) の 花 ( はな ) 残りたり。 路 ( みち ) の右左、 躑躅 ( つつじ ) の花の 紅 ( くれない ) なるが、見渡す 方 ( かた ) 、見返る 方 ( かた ) 、いまを 盛 ( さかり ) なりき。ありくにつれて 汗 ( あせ ) 少しいでぬ。
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99Author:  Izumi ShikibuAdd
 Title:  Izumi Shikibu nikki [Sanjonishike-bon manuscript]  
 Published:  2000 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description: ゆめよりもはかなき世のなかをなげきわびつゝあかしくらすほどに、四月十よひ にもなりぬれば、木のしたくらがりもてゆく。ついひぢのうへの草あをやかなるも、 人はことにめもとゞめぬを、あはれとながむるほどに、ちかきすいがいのもとに人の けはひすれば、たれならんとおもふほどに、〔さしいでたるをみれば〕、故宮にさぶ らひしことねりわらはなりけり。あはれにものゝおぼゆるほどにきたれば、「などか ひさしくみえざりつる。とをざかるむかしのなごりにもおもふを」などいはすれば、「そのことゝさぶらはでは、なれ/\しきさまにやとつゝましう候うちに、日ごろは山でらにまかりありきてなん。いとたよりなくつれ%\に思たまふらるれば、御かはりにもみたてまつらんとてなんそちの宮にまいりてさぶらふ」とかたる。「いとよきことにこそあなれ。そのみやはいとあてに、けゝしうおはしますなるは、むかしのやうには、えしもあらじ」などいへば、「しかおはしませど、いとけぢかくおはしまして、『つねにまいるや』とゝはせおはしまして、『まいり侍』と申候つれば、『これもてまいりて、′いかゞみ給′とてたてまつらせよ』とのたまはせつる」とて、たちばなの花をとりいでたれば、「むかしの人の」といはれて、「さらばまいりなん。 いかゞきこえさすべき」といへば、ことばにてきこえさせんもかたはらいたくて、な にかはあだ/\しくもまだきこえ給はぬを、はかなきことをもと思て、
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100Author:  Izumi, KyokaAdd
 Title:  Shippo no hashira  
 Published:  2003 
 Subjects:  Japanese Text Initiative 
 Description:   山吹 ( やまぶき ) つつじが 盛 ( さかり ) だのに、その日の寒さは、 俥 ( くるま ) の上で幾度も外套の 袖 ( そで ) をひしひしと 引合 ( ひきあわ ) せた。
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