5 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Baishoku kamonanban | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | はじめ、目に着いたのは――ちと申兼ねるが、――とにかく、
緋縮緬
(
ひぢりめん
)
であった。その燃立つようなのに、朱で
処々
(
ところどころ
)
ぼかしの入った
長襦袢
(
ながじゅばん
)
で。女は
裙
(
すそ
)
を
端折
(
はしょ
)
っていたのではない。
褄
(
つま
)
を高々と掲げて、膝で挟んだあたりから、
紅
(
くれない
)
がしっとり垂れて、白い足くびを
絡
(
まと
)
ったが、どうやら濡しょびれた不気味さに、そうして引上げたものらしい。素足に染まって、その
紅
(
あか
)
いのが映りそうなのに、藤色の緒の重い厚ぼったい
駒下駄
(
こまげた
)
、泥まみれなのを、弱々と内輪に揃えて、
股
(
また
)
を一つ
捩
(
よじ
)
った姿で、
降
(
ふり
)
しきる雨の待合所の片隅に、腰を掛けていたのである。 | | Similar Items: | Find |
7 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Gaisenmatsuri | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 紫の幕、
紅
(
くれない
)
の旗、空の色の青く晴れたる、草木の色の緑なる、
唯
(
ただ
)
うつくしきものの
弥
(
いや
)
が上に重なり合ひ、
打混
(
うちこん
)
じて、
譬
(
たと
)
へば
大
(
おおい
)
なる
幻燈
(
うつしえ
)
の
花輪車
(
かりんしゃ
)
の輪を造りて、
烈
(
はげ
)
しく舞出で、舞込むが見え候のみ。何をか
緒
(
いとぐち
)
として順序よく申上げ候べき。全市街はその日朝まだきより、七色を以て彩られ候と申すより他はこれなく候。 | | Similar Items: | Find |
8 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Getsurei junitai | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: |
山嶺
(
さんれい
)
の
雪
(
ゆき
)
なほ
深
(
ふか
)
けれども、
其
(
そ
)
の
白妙
(
しろたへ
)
に
紅
(
くれなゐ
)
の
日
(
ひ
)
や、
美
(
うつく
)
しきかな
玉
(
たま
)
の
春
(
はる
)
。
松籟
(
しようらい
)
時
(
とき
)
として
波
(
なみ
)
に
吟
(
ぎん
)
ずるのみ、
撞
(
つ
)
いて
驚
(
おどろ
)
かす
鐘
(
かね
)
もなし。
萬歳
(
まんざい
)
の
鼓
(
つゞみ
)
遙
(
はる
)
かに、
鞠唄
(
まりうた
)
は
近
(
ちか
)
く
梅
(
うめ
)
ヶ
香
(
か
)
と
相
(
あひ
)
聞
(
き
)
こえ、
突羽根
(
つくばね
)
の
袂
(
たもと
)
は
松
(
まつ
)
に
友染
(
いうぜん
)
を
飜
(
ひるがへ
)
す。をかし、
此
(
こ
)
のあたりに
住
(
すま
)
ふなる
橙
(
だい/\
)
の
長者
(
ちやうじや
)
、
吉例
(
きちれい
)
よろ
昆布
(
こんぶ
)
の
狩衣
(
かりぎぬ
)
に、
小殿原
(
ことのばら
)
の
太刀
(
たち
)
を
佩反
(
はきそ
)
らし、
七草
(
なゝくさ
)
の
里
(
さと
)
に
若菜
(
わかな
)
摘
(
つ
)
むとて、
讓葉
(
ゆづりは
)
に
乘
(
の
)
つたるが、
郎等
(
らうどう
)
勝栗
(
かちぐり
)
を
呼
(
よ
)
んで
曰
(
いは
)
く、あれに
袖形
(
そでかた
)
の
浦
(
うら
)
の
渚
(
なぎさ
)
に、
紫
(
むらさき
)
の
女性
(
によしやう
)
は
誰
(
た
)
そ。……
蜆
(
しゞみ
)
御前
(
ごぜん
)
にて
候
(
さふらふ
)
。 | | Similar Items: | Find |
9 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Hakushaku no kanzashi | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | このもの
語
(
がたり
)
の起った土地は、清きと、美しきと、二筋の大川、市の両端を流れ、
真中央
(
まんなか
)
に城の天守なお高く
聳
(
そび
)
え、森黒く、
濠
(
ほり
)
蒼
(
あお
)
く、国境の山岳は
重畳
(
ちょうじょう
)
として、湖を包み、海に沿い、橋と、坂と、辻の柳、
甍
(
いらか
)
の浪の町を
抱
(
いだ
)
いた、北陸の都である。 | | Similar Items: | Find |
10 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Hebikui | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: |
西
(
にし
)
は
神通川
(
じんつうがは
)
の
堤防
(
ていばう
)
を
以
(
もつ
)
て
劃
(
かぎり
)
とし、
東
(
ひがし
)
は
町盡
(
まちはづれ
)
の
樹林
(
じゆりん
)
境
(
さかひ
)
を
爲
(
な
)
し、
南
(
みなみ
)
は
海
(
うみ
)
に
到
(
いた
)
りて
盡
(
つ
)
き、
北
(
きた
)
は
立山
(
りふざん
)
の
麓
(
ふもと
)
に
終
(
をは
)
る。
此間
(
このあひだ
)
十
里
(
り
)
見通
(
みとほ
)
しの
原野
(
げんや
)
にして、
山水
(
さんすゐ
)
の
佳景
(
かけい
)
いふべからず。
其
(
その
)
川
(
かは
)
幅
(
はゞ
)
最
(
もつと
)
も
廣
(
ひろ
)
く、
町
(
まち
)
に
最
(
もつと
)
も
近
(
ちか
)
く、
野
(
の
)
の
稍
(
やゝ
)
狹
(
せま
)
き
處
(
ところ
)
を
郷
(
がう
)
屋敷田畝
(
やしきたんぼ
)
と
稱
(
とな
)
へて、
雲雀
(
ひばり
)
の
巣獵
(
すあさり
)
、
野草
(
のぐさ
)
摘
(
つみ
)
に
妙
(
めう
)
なり。 | | Similar Items: | Find |
11 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Ki no saki o omou | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: |
雨
(
あめ
)
が、さつと
降出
(
ふりだ
)
した、
停車場
(
ていしやば
)
へ
着
(
つ
)
いた
時
(
とき
)
で――
天象
(
せつ
)
は
卯
(
う
)
の
花
(
はな
)
くだしである。
敢
(
あへ
)
て
字義
(
じぎ
)
に
拘泥
(
こうでい
)
する
次第
(
しだい
)
ではないが、
雨
(
あめ
)
は
其
(
そ
)
の
花
(
はな
)
を
亂
(
みだ
)
したやうに、
夕暮
(
ゆふぐれ
)
に
白
(
しろ
)
かつた。やゝ
大粒
(
おほつぶ
)
に
見
(
み
)
えるのを、もし
掌
(
たなごころ
)
にうけたら、
冷
(
つめた
)
く、そして、ぼつと
暖
(
あたゝか
)
に
消
(
き
)
えたであらう。
空
(
そら
)
は
暗
(
くら
)
く、
風
(
かぜ
)
も
冷
(
つめ
)
たかつたが、
温泉
(
ゆ
)
の
町
(
まち
)
の
但馬
(
たじま
)
の
五月
(
ごぐわつ
)
は、
爽
(
さわやか
)
であつた。 | | Similar Items: | Find |
14 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Koyahijiri | | | Published: | 2000 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 「參謀本部編纂の地圖を又繰開いて見るでもなからう、と思つたけれども、餘りの道ぢやから、手を觸るさへ暑くるしい、旅の法衣の袖をかゝげて、表紙を附けた折本になつてるのを引張り出した。 | | Similar Items: | Find |
16 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Maigo | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | お
孝
(
かう
)
が
買物
(
かひもの
)
に
出掛
(
でか
)
ける
道
(
みち
)
だ。
中里町
(
なかざとまち
)
から
寺町
(
てらまち
)
へ
行
(
ゆ
)
かうとする
突當
(
つきあたり
)
の
交番
(
かうばん
)
に
人
(
ひと
)
だかりがして
居
(
ゐ
)
るので
通過
(
とほりす
)
ぎてから
小戻
(
こもどり
)
をして、
立停
(
たちどま
)
つて、
少
(
すこ
)
し
離
(
はな
)
れた
處
(
ところ
)
で
振返
(
ふりかへ
)
つて
見
(
み
)
た。 | | Similar Items: | Find |
19 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Ningyo no hokora | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 「いまの、あの
婦人
(
ふじん
)
が
抱
(
だ
)
いて
居
(
ゐ
)
た
嬰兒
(
あかんぼ
)
ですが、
鯉
(
こひ
)
か、
鼈
(
すつぽん
)
ででも
有
(
あ
)
りさうでならないんですがね。」 | | Similar Items: | Find |
21 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Onryo shakuyo | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 婦人は、座の
傍
(
かたわら
)
に人気のまるでない時、ひとりでは
按摩
(
あんま
)
を取らないが
可
(
い
)
いと、
昔気質
(
むかしかたぎ
)
の誰でもそう云う。
上
(
かみ
)
はそうまでもない。あの
下
(
しも
)
の事を言うのである。
閨
(
ねや
)
では別段に注意を要するだろう。以前は影絵、うつし絵などでは、
巫山戯
(
ふざけ
)
たその光景を見せたそうで。――
御新姐
(
ごしんぞ
)
さん、……奥さま。……さ、お横に、とこれから腰を
揉
(
も
)
むのだが、横にもすれば、
俯向
(
うつむけ
)
にもする、一つくるりと返して、ふわりと柔くまた横にもしよう。水々しい
魚
(
うお
)
は、真綿、羽二重の
俎
(
まないた
)
に寝て、術者はまな
箸
(
ばし
)
を持たない料理人である。
衣
(
きぬ
)
を
透
(
とお
)
して、肉を揉み、筋を
萎
(
なや
)
すのであるから
恍惚
(
うっとり
)
と身うちが溶ける。ついたしなみも粗末になって、下じめも解けかかれば、帯も緩くなる。きちんとしていてさえざっとこの趣。……
遊山
(
ゆさん
)
旅籠
(
はたご
)
、温泉宿などで
寝衣
(
ねまき
)
、浴衣に、
扱帯
(
しごき
)
、
伊達巻
(
だてまき
)
一つの時の様子は、ほぼ……お互に、しなくっても
可
(
よ
)
いが想像が出来る。
膚
(
はだ
)
を左右に揉む拍子に、いわゆる
青練
(
あおねり
)
も
溢
(
こぼ
)
れようし、
緋縮緬
(
ひぢりめん
)
も
友染
(
ゆうぜん
)
も敷いて落ちよう。按摩をされる
方
(
かた
)
は、
対手
(
あいて
)
を
盲
(
めくら
)
にしている。そこに姿の油断がある。足くびの時なぞは、一応は職業行儀に心得て、
太脛
(
ふくらはぎ
)
から曲げて引上げるのに、すんなりと
衣服
(
きもの
)
の
褄
(
つま
)
を巻いて包むが、療治をするうちには双方の気のたるみから、
踵
(
かかと
)
を
摺下
(
ずりさが
)
って褄が波のようにはらりと落ちると、包ましい膝のあたりから、白い踵が、空にふらふらとなり、しなしなとして、按摩の手の
裡
(
うち
)
に糸の乱るるがごとく
縺
(
もつ
)
れて、
艶
(
えん
)
に
媚
(
なまめ
)
かしい
上掻
(
うわがい
)
、
下掻
(
したがい
)
、ただ
卍巴
(
まんじともえ
)
に降る雪の中を
倒
(
さかし
)
に
歩行
(
ある
)
く風情になる。バッタリ
真暗
(
まっくら
)
になって、……影絵は消えたものだそうである。 | | Similar Items: | Find |
23 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Ryutandan | | | Published: | 2001 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 日は
午
(
ご
)
なり。あらら
木
(
ぎ
)
のたらたら坂に
樹
(
き
)
の蔭もなし。寺の
門
(
もん
)
、植木屋の庭、花屋の店など、坂下を
挟
(
さしはさ
)
みて町の入口にはあたれど、のぼるに従ひて、ただ
畑
(
はた
)
ばかりとなれり。番小屋めきたるもの小だかき
処
(
ところ
)
に見ゆ。谷には
菜
(
な
)
の
花
(
はな
)
残りたり。
路
(
みち
)
の右左、
躑躅
(
つつじ
)
の花の
紅
(
くれない
)
なるが、見渡す
方
(
かた
)
、見返る
方
(
かた
)
、いまを
盛
(
さかり
)
なりき。ありくにつれて
汗
(
あせ
)
少しいでぬ。 | | Similar Items: | Find |
25 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Shosui fukaku seiro harukeki zushi yori | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: |
櫻山
(
さくらやま
)
に
夏鶯
(
なつうぐひす
)
音
(
ね
)
を
入
(
い
)
れつゝ、
岩殿寺
(
いはとのでら
)
の
青葉
(
あをば
)
に
目白
(
めじろ
)
鳴
(
な
)
く。なつかしや
御堂
(
みだう
)
の
松翠
(
しようすゐ
)
愈々
(
いよ/\
)
深
(
ふか
)
く、
鳴鶴
(
なきつる
)
ヶ
崎
(
さき
)
の
浪
(
なみ
)
蒼
(
あを
)
くして、
新宿
(
しんじゆく
)
の
濱
(
はま
)
、
羅
(
うすもの
)
の
雪
(
ゆき
)
を
敷
(
し
)
く。そよ/\と
風
(
かぜ
)
の
渡
(
わた
)
る
處
(
ところ
)
、
日盛
(
ひざか
)
りも
蛙
(
かはづ
)
の
聲
(
こゑ
)
高
(
たか
)
らかなり。
夕涼
(
ゆふすゞ
)
みには
脚
(
あし
)
の
赤
(
あか
)
き
蟹
(
かに
)
も
出
(
い
)
で、
目
(
め
)
の
光
(
ひか
)
る
鮹
(
たこ
)
も
顯
(
あらは
)
る。
撫子
(
なでしこ
)
はまだ
早
(
はや
)
し。
山百合
(
やまゆり
)
は
香
(
か
)
を
留
(
と
)
めつ。
月見草
(
つきみさう
)
は
露
(
つゆ
)
ながら
多
(
おほ
)
くは
別莊
(
べつさう
)
に
圍
(
かこ
)
はれたり。
野
(
の
)
の
花
(
はな
)
は
少
(
すくな
)
けれど、よし
蘆垣
(
あしがき
)
の
垣間見
(
かいまみ
)
を
咎
(
とが
)
むるもののなきが
嬉
(
うれ
)
し。 | | Similar Items: | Find |
26 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Sunjo fudoki | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: |
金澤
(
かなざは
)
の
正月
(
しやうぐわつ
)
は、お
買初
(
かひぞ
)
め、お
買初
(
かひぞ
)
めの
景氣
(
けいき
)
の
好
(
い
)
い
聲
(
こゑ
)
にてはじまる。
初買
(
はつがひ
)
なり。
二日
(
ふつか
)
の
夜中
(
よなか
)
より
出
(
いで
)
立
(
た
)
つ。
元日
(
ぐわんじつ
)
は
何
(
なん
)
の
商賣
(
しやうばい
)
も
皆
(
みな
)
休
(
やす
)
む。
初買
(
はつがひ
)
の
時
(
とき
)
、
競
(
きそ
)
つて
紅鯛
(
べにだひ
)
とて
縁起
(
えんぎ
)
ものを
買
(
か
)
ふ。
笹
(
さゝ
)
の
葉
(
は
)
に、
大判
(
おほばん
)
、
小判
(
こばん
)
、
打出
(
うちで
)
の
小槌
(
こづち
)
、
寶珠
(
はうしゆ
)
など、
就中
(
なかんづく
)
、
緋
(
ひ
)
に
染色
(
そめいろ
)
の
大鯛
(
おほだひ
)
小鯛
(
こだひ
)
を
結
(
ゆひ
)
付
(
つ
)
くるによつて
名
(
な
)
あり。お
酉樣
(
とりさま
)
の
熊手
(
くまで
)
、
初卯
(
はつう
)
の
繭玉
(
まゆだま
)
の
意氣
(
いき
)
なり。
北國
(
ほくこく
)
ゆゑ
正月
(
しやうぐわつ
)
はいつも
雪
(
ゆき
)
なり。
雪
(
ゆき
)
の
中
(
なか
)
を
此
(
こ
)
の
紅鯛
(
べにだひ
)
綺麗
(
きれい
)
なり。
此
(
こ
)
のお
買初
(
かひぞ
)
めの、
雪
(
ゆき
)
の
眞夜中
(
まよなか
)
、うつくしき
灯
(
ひ
)
に、
新版
(
しんぱん
)
の
繪草紙
(
ゑざうし
)
を
母
(
はゝ
)
に
買
(
か
)
つてもらひし
嬉
(
うれ
)
しさ、
忘
(
わす
)
れ
難
(
がた
)
し。 | | Similar Items: | Find |
27 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Tettsui no oto | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: |
天
(
てん
)
未
(
いまだ
)
に
闇
(
くら
)
し。
東方
(
とうはう
)
臥龍山
(
ぐわりうざん
)
の
巓
(
いたゞき
)
少
(
すこ
)
しく
白
(
しら
)
みて、
旭日
(
きよくじつ
)
一帶
(
いつたい
)
の
紅
(
こう
)
を
潮
(
てう
)
せり。
昧爽
(
まいさう
)
氣
(
き
)
清
(
きよ
)
く、
神
(
しん
)
澄
(
す
)
みて、
街衢
(
がいく
)
縱横
(
じうわう
)
の
地平線
(
ちへいせん
)
、
皆
(
みな
)
眼眸
(
がんぼう
)
の
裡
(
うち
)
にあり。
然
(
しか
)
して
國主
(
こくしゆ
)
が
掌中
(
しやうちう
)
の
民
(
たみ
)
十萬
(
じふまん
)
、
今
(
いま
)
はた
何
(
なに
)
をなしつゝあるか。 | | Similar Items: | Find |
28 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Tochi no mi | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: |
朝六
(
あさむ
)
つの橋を、その
明方
(
あけがた
)
に渡った――この橋のある
処
(
ところ
)
は、いま
麻生津
(
あそうづ
)
という里である。それから三里ばかりで
武生
(
たけふ
)
に着いた。みちみち
可懐
(
なつかし
)
い
白山
(
はくさん
)
にわかれ、
日野
(
ひの
)
ヶ
峰
(
みね
)
に迎えられ、やがて、越前の
御嶽
(
みたけ
)
の
山懐
(
やまふところ
)
に
抱
(
だ
)
かれた事はいうまでもなかろう。――武生は昔の
府中
(
ふちゅう
)
である。 | | Similar Items: | Find |
30 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Wakana no uchi | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 春の山――と、優に大きく、
申出
(
もうしい
)
でるほどの事ではない。われら式のぶらぶらあるき、
彼岸
(
ひがん
)
もはやくすぎた、四月上旬の
田畝路
(
たんぼみち
)
は、
些
(
ち
)
とのぼせるほど
暖
(
あたたか
)
い。 | | Similar Items: | Find |
31 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Yajiko | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: |
今
(
いま
)
は
然
(
さ
)
る
憂慮
(
きづかひ
)
なし。
大塚
(
おほつか
)
より
氷川
(
ひかは
)
へ
下
(
お
)
りる、たら/\
坂
(
ざか
)
は、
恰
(
あたか
)
も
芳野世經氏宅
(
よしのせいけいしたく
)
の
門
(
もん
)
について
曲
(
まが
)
る、
昔
(
むかし
)
は
辻斬
(
つじぎり
)
ありたり。こゝに
幽靈坂
(
いうれいざか
)
、
猫又坂
(
ねこまたざか
)
、くらがり
坂
(
ざか
)
など
謂
(
い
)
ふあり、
好事
(
かうず
)
の
士
(
し
)
は
尋
(
たづ
)
ぬべし。
田圃
(
たんぼ
)
には
赤蜻蛉
(
あかとんぼ
)
、
案山子
(
かゝし
)
、
鳴子
(
なるこ
)
などいづれも
風情
(
ふぜい
)
なり。
天
(
てん
)
麗
(
うらゝ
)
かにして
其
(
その
)
幽靈坂
(
いうれいざか
)
の
樹立
(
こだち
)
の
中
(
なか
)
に
鳥
(
とり
)
の
聲
(
こゑ
)
す。
句
(
く
)
になるね、と
知
(
し
)
つた
振
(
ふり
)
をして
聲
(
こゑ
)
を
懸
(
か
)
くれば、
何
(
なに
)
か
心得
(
こゝろえ
)
たる
樣子
(
やうす
)
にて
同行
(
どうかう
)
の
北八
(
きたはち
)
は
腕組
(
うでぐみ
)
をして
少時
(
しばらく
)
默
(
だま
)
る。 | | Similar Items: | Find |
32 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Yamanote shokei | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 「お
美津
(
みつ
)
、おい、
一寸
(
ちよつと
)
、あれ
見
(
み
)
い。」と
肩
(
かた
)
を
擦合
(
すりあ
)
はせて
居
(
ゐ
)
る
細君
(
さいくん
)
を
呼
(
よ
)
んだ。
旦那
(
だんな
)
、
其
(
そ
)
の
夜
(
よ
)
の
出
(
で
)
と
謂
(
い
)
ふは、
黄
(
き
)
な
縞
(
しま
)
の
銘仙
(
めいせん
)
の
袷
(
あはせ
)
に
白縮緬
(
しろちりめん
)
の
帶
(
おび
)
、
下
(
した
)
にフランネルの
襯衣
(
シヤツ
)
、これを
長襦袢
(
ながじゆばん
)
位
(
くらゐ
)
に
心得
(
こゝろえ
)
て
居
(
ゐ
)
る
人
(
ひと
)
だから、けば/\しく
一着
(
いつちやく
)
して、
羽織
(
はおり
)
は
着
(
き
)
ず、
洋杖
(
ステツキ
)
をついて、
紺足袋
(
こんたび
)
、
山高帽
(
やまたかばう
)
を
頂
(
いたゞ
)
いて
居
(
ゐ
)
る、
脊
(
せ
)
の
高
(
たか
)
い
人物
(
じんぶつ
)
。 | | Similar Items: | Find |
33 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Yosoki | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: | 加賀の国
黒壁
(
くろかべ
)
は、金沢市の郊外一
里程
(
りてい
)
の処にあり、魔境を
以
(
もっ
)
て
国中
(
こくちゅう
)
に鳴る。
蓋
(
けだ
)
し
野田山
(
のだやま
)
の奥、深林幽暗の地たるに因れり。 | | Similar Items: | Find |
34 | Author: | Izumi, Kyoka | Add | | Title: | Zushi dayori | | | Published: | 2003 | | | Subjects: | Japanese Text Initiative | | | Description: |
夜
(
よる
)
は、はや
秋
(
あき
)
の
螢
(
ほたる
)
なるべし、
風
(
かぜ
)
に
稻葉
(
いなば
)
のそよぐ
中
(
なか
)
を、
影
(
かげ
)
淡
(
あは
)
くはら/\とこぼるゝ
状
(
さま
)
あはれなり。 | | Similar Items: | Find |
40 | Author: | Irving, Washington | Add | | Title: | A Tour on the Prairies. | | | Published: | 2000 | | | Subjects: | University of Virginia Library, Text collection | UVA-LIB-Text | | | Description: | HAVING, since my return to the United States, made a wide and varied tour,
for the gratification of my curiosity, it has been supposed that I did it
for the purpose of writing a book; and it has more than once been intimated
in the papers, that such a work was actually in the press, containing scenes
and sketches of the Far West. | | Similar Items: | Find |
44 | Author: | Ingersoll, Robert G. | Add | | Title: | Tolstoy and "The Kreutzer Sonata" | | | Published: | 1996 | | | Subjects: | University of Virginia Library, Text collection | UVA-LIB-Text | | | Description: | COUNT TOLSTOÏ is a man of genius. He is acquainted with
Russian life from the highest to the lowest—that is to say, from
the worst to the best. He knows the vices of the rich and the
virtues of the poor. He is a Christian, a real believer in the Old
and New Testaments, an honest follower of the Peasant of Palestine.
He denounces luxury and ease, art and music; he regards a flower
with suspicion, believing that beneath every blossom lies a coiled
serpent. He agrees with Lazarus and denounces Dives and the tax-gatherers. He is opposed, not only to doctors of divinity, but of
medicine. | | Similar Items: | Find |
45 | Author: | Irving, Washington | Add | | Title: | A Tour on the Prairies. | | | Published: | 2000 | | | Subjects: | University of Virginia Library, Text collection | UVA-LIB-Text | | | Description: | HAVING, since my return to the United States, made a wide and varied tour, for
the gratification of my curiosity, it has been supposed that I did it for the
purpose of writing a book; and it has more than once been intimated in the
papers, that such a work was actually in the press, containing scenes and
sketches of the Far West. | | Similar Items: | Find |
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